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第18章 虹
いつの間にか寝てしまった。
目が覚めた。
あれ?お母さんが居る。
お父さんも居る。
え?
どういうこと?
夢?
でも、夢でも良い。
私と3人でご飯食べている。
色々な話をした。
今度の週末はショッピングに行く約束もした。
お父さんが私に服を買ってくれるって言ってくれた。
幸せだ。
途中から夢って事には気付いてる。
だけど、もう覚めないで。
何も要らないから。
お母さんとお父さんが居ればもう何でもいいの。
どこにも行かないで。
私を1人にしないで!
その瞬間目が覚めた。
「夢でも会えて良かったよ。」
私は泣きながら呟いた。
朝。
いつも通りの朝。
何も変わらず世界は回る。
ガチャ。
誰が玄関の鍵を開けて入ってきた。
私は怖くなって震えながら
「誰?…」
と呟いた。
よく見ると今の父親だ。
私を見ると彼はいきなり土下座してきた。
「すまなかった。許してくれ。」
なんて都合が良いの。
私は怒りや憎しみより呆れが勝った。
「もうあなたとは暮らせない。無理。これ以上ここに居座るなら警察呼ぶよ。」
「何とか許してくれ。」
「早く荷物まとめて出て行ってよ。あの女の所に行けよ。もう私とお母さんの家をめっちゃくちゃにしないで!全部あんたのせいなんだよ。めっちゃくちゃなんだよ!もう私を困らさないでよ!殴られた事だって一生忘れない。あんたが殴った背中に痣ができた。そのせいで、私はおしゃれな服とか、Tシャツとか着れなかったんだよ?全部責任取ってよ!お母さんと結婚したならせめてお母さんだけでもちゃんと最後まで愛せよ!!!」
大声で泣きながら叫んだ。
私は床に座り込んで泣いた。
感情のコントロールが出来ない。
「カギも返して。これ私とお母さんから。」
私は1万円を渡した。
もうこれでおさらば。
父親はそれをひったくるように手に取り、部屋から荷物まとめて何も言わずに出ていった。
最悪な月曜日の始まりだ。
私はなんだか学校に行くのがいやになってずっと床に座り込んでいた。
気が付いたら9時になっていた。
「あ。もう学校始まってる。」
でも、行く気になれない。
多分行けない。
心がしんどい。
身体がしんどい。
気持ちがしんどい。
このまま家に居よう。
今日はどうにでもなればいい。
ザッー。ザッーー!
外を見ると雨が降ってきた。
大雨だ。
風もすごい。
良かった。
今日学校に行かなくて。
夏の雨。
昼になってもまだ降り続いている。
最近の晴れ模様が嘘みたいだ。
なんだか今日は雨が心地いい。
慰めの音楽とかかけなくてもいい。
雨が私の心と気持ちを洗い流してくれるような気がした。
夕方。
雨が少し弱くなっていた。
あー。
今日は本当に何もしなかったな。
学校もサボっちゃったし。
まぁ良いか。
喉が乾いたから冷蔵庫から水を取る。
水を飲んでると雨が上がっていた。
ピンポンー!
誰かがインターホンを押した。
また父親?
誰?
ドアをガチャって開けると健くんが居た。
「美希ちゃん。今日学校来てなかったけどなんかあった?」
「なんもないよ、」
また強がった。
正直に言えばいいのに。
私ってバカだよね。
すると健くんが私手を取ってギュッと抱き寄せた。
「えっ。あ。ちょっと。まって。」
「美希ちゃん。嘘下手だよ。しんどい事あったでしょ?でも、言わなくて良いから。言いたくなったら言いなよ。味方で居るって言ったでしょ。」
「ぅう。健くん。ありがとう。」
私は健くんの胸で泣いた。
抱き合ってる私たちを雨上がりの虹が見守っていた。
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