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第19章 好きです
夏休みが始まった。
窓を開けてても暑い。
扇風機の前に座ってお茶を飲む。
今日は健くんと星を見に行く日。
朝からなんだかソワソワして5時には目が覚めた。
虫に刺されないように虫除けスプレーも持っていかないと。
夜だから懐中電灯もいるかな?
ワクワクしながら準備をした。
まるで小学校の遠足のように。
夜まで雨が降らないように。
とお願いした。
夜は冷えるかな?
長袖も羽織っていこう。
今日は、美希ちゃんと星を見に行く日。
こんなデートみたいなのは初めてでとても緊張している。
でも、星より気になることがある。
告白の返事だ。
星を見に行った時に答えを伝える。
そう美希ちゃんは言っていた。
僕は星を一緒に見に行ける喜びと、告白の返事のドキドキで胸がキューって締め付けられた。
夕方に公園で待ち合わせすることになった。
一気に日差しがキツくなった。
お昼になるにつれて気温が上がっていく。
それと同時に私の緊張とドキドキも上がっていく。
僕の緊張と胸のギューッとした締め付けも上がっていく。
「健くんと一緒に星を見に行けるのが楽しみだなー。」
私は呟いた。
健くんは楽しみにしてるかなー?
「美希ちゃんと一緒に星を見に行けるのが楽しみだなー。」
僕は呟いた。
美希ちゃんは楽しみにしてるかなー?
夕方になるにつれて気温が少しずつ下がってきた。
そろそろ家を出よう。
お母さん、お父さん行ってきます。
恥ずかしいからあんまり宙の上から見ないでね。
そう2人の写真に言って家を出た。
公園に向かった。
道中で小麦色をした小学生が楽しそうに自転車漕いでいた。
近所のおばさんは道路に水を撒いてた。
あ。
この前あったギターを弾いてたお兄さんが居た。
この前と同じ場所で。
「お兄さん。こんにちは。」
「あー。この前の!奇遇だね。」
「今日も弾くの?」
「そうやな!」
そう言ってお兄さんはニコニコしてた。
「お姉さんはこれから何処か行くの?」
「うん。大切な人と星を観に行くの。」
「そっかー!青春だ。楽しんで。」
「また歌聞かせてね!今度は聞くから!」
「うん!じゃ今度聞かせるときまでに新曲作る!」
「えー!すごいね。」
「今。降りてきた。お姉さんをテーマにした曲にするよ。」
「おばあちゃん行ってくるね。」
「健、これ持っていきな。お腹空くだろうから。」
おばあちゃんをそう言っておにぎりを僕に持たせた。
「こっちは美希ちゃんの分だから。ちゃんと美希ちゃんと一緒に居るんだよ。手を離したらダメよ。」
「わかってる。」
そう言って僕は家を出た。
公園に着いた。
ベンチに座る。
公園に居るのは私だけだ。
夕陽が公園を照らす。
光の向こうから健くんの姿が見えた。
少し照れたように笑ってこっちに来た。
「ごめん!待った?」
「ううん。今来たところ。」
「これ、おばあちゃんから持たされたおにぎり。」
「ありがとうー!食べながら星を見よう!」
私たちは星が見える丘に向かって歩いた。
夕陽と月が交差する時間。
辺りは段々と暗くなってきた。
丘の上にはベンチがあった。
「あのベンチに座ろう。」
「うん。お腹減っちゃた。」
丘の上に来た。
街の景色が一望出来る所だった。
様々な家があって、様々な灯りが灯っている。
気がつくと夕陽はなくなって、月が姿を表していた。
満月。
満月が私たちを照らしてくれてるような気分になった。
私たちはおにぎりを食べた。
自然の中で食べるおにぎりは美味しかった。
口に入れただけで優しさと温かさが広がった。
「美味しい!おばあちゃんのおにぎりはやっぱり美味しいね。」
「だね!自然の中で食べるおにぎりは格別だね。」
おにぎりを食べ終わった。
ふと空を見上げた。
満点の星。
空いっぱいに見える星。
輝きを放って輝いている。
「綺麗だね。」
「うん。」
「あれが、夏の大三角形ってやつだよ。」
そうやって健くんは教えてくれた。
「あ。流れ星!」
「ほんとだ。」
「お願い事した?」
「早すぎて出来なかった。」
「あららー。」
「美希ちゃんはなんかしたの?」
私は顔が熱くなるのが分かった。
したよ。ずっと一緒に居てって。
そう言いたかった。
だけど、口に出すとなんだか分からないけど涙が出てきそうだった。
私なんかで良いのかな?
今日答えを出さなきゃいけないのに。
私はまだウジウジしている。
早く言わないと。
「あのさ。」
「何?」
「私ね。健くんの事がね…」
私は今世紀最大に緊張している。
心臓の音がバクバクする。
照れている?
これが恋?
「好きです。この前の答えを言います。私と付き合ってください。」
言っちゃった。
めっちゃ熱い。
火照ってるのが分かる。
「ありがとう。俺も美希ちゃんが好きだよ。」
私たちは付き合った。
私頑張った。
勇気出して言った。
「美希ちゃん。」
健くんが私を呼んだ。
私が振り向くと健くんは私を抱き寄せてきた。
そしてキスをした。
初めてのキス。
甘酸っぱくてよく分からない感情だった。
何故だか分からないけど泣きそうになった。
私たちの恋を満月と星が祝福してるように照らしていた。
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