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第20章 たくさんの初めて
星が宙いっぱいに広がってる。
星が私たちを照らしている。
街全体を照らしている。
あの星たちに包まれていたい。
星を見ながらずっと2人でいたい。
でも、ずっとなんて事はないよね。
最後は1人だよね。
でも、今は、今が良かったらそれでいい。
多分それで良い。
私はそれで良い。
星を見た帰り道。
唇と唇を重ねて、頬が熱くなってた。
それを夏の生暖かい風が撫でるように吹いてた。
手を握ってた。
いつもより強く。
指と指を重ねて、外れないように。
丘から降りた。
帰り道、会話はなかった。
話したくないって言うわけじゃなく、何か心地良さを感じてた。
ただただ横目で見つめることしか出来なかった。
真っ直ぐ見つめると言葉が出てこなくなる。
横にいてくれるだけで良かった。
手を繋いでくれるだけで良かった。
これ以上の幸せはないと感じた。
「遅くなったね。送るよ。」
「ありがとう。」
そういって私の家の方に向かって歩き始めた。
いつもの道。
けど、昼間とは違うように感じた。
街灯が街を照らしいてる。
街灯の灯りに虫が集まっている。
「あ。カブトムシだよ。」
「ほんとだ。俺昔飼ってた。」
「やっぱり男の子はカブトムシとか好きなんだね。」
「虫嫌い?」
「無理ー。小さい頃は蝉とか触れたけどね。今はもう無理だな。」
そういって笑った。
「ここで、路上ライブしてるお兄さんがいるんだよ。この前たまたま歌ってるの聴いて涙が出ちゃったんだ。」
「1人でやってるの?」
「多分そう。今度新曲書いてくるって言ってた。」
「楽しみだね。どんな曲になるのか。」
私の事をテーマに書いてくれるらしいって言いかけて言うのをやめた。
なんかそれは私の中に閉まっときたかった。
私が知ってる秘密にしときたかった。
言ったら照れるから。
ぽつ。ぽつ。
ザー。
雨が降ってきた。
「雨が降ってきたよ。急ごう。」
急いで家に帰った。
「雨すごいね。これは止みそうにないよ。」
「でも、帰らなきゃ。」
私は健くんの服を掴んで
「帰らないで。ずっと一緒に居て。」
「でも、」
「わがまま聞いてくれないの?」
「聞くよ。一緒に居よう。」
〜私は今日1人じゃない。
誰かと一緒に居るんだ。
ぎゅっと抱きしめたい。
頭を撫でてほしい。
たくさんの初めてをしたい。
健くんが良い。
これからも2人が良い。
明日が来ないなら今日を楽しむ。〜
私が初めて健と自分の家に泊まった時を思い出した。
あの時の路上ライブのお兄さんはTVに出るぐらいのミュージシャンになった。
私をテーマにした曲を書いてくれた。
でも歌詞が書けなかったらしい。
私に書いて欲しいって頼まれた。
当時高校生だったし、私には無理だと思って断った。
だけど、お兄さんがあまりにもお願いするので、自分の思うがままに歌詞を書いた。
そして、曲が完成した。
その曲でお兄さんはメジャーデビューした。
このことを健は知らない。
いつ言おうかなー。
健がいつも聞いてるその曲は私が歌詞書いたって。
これからも2人が良い。
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