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第22章 星の写真集
トントン。
病室のドアをノックする音がする。
一瞬で誰か分かった。
健くんだ。
健くんは学生服のままだった。
学校終わりに来てくれたらしい。
「美希ちゃん。頼まれてた本持ってきたよ。」
「ありがとう。ごめんね。頼んで。」
「ううん。こっちこそ遅くなってごめんなー。一緒に見たいっていう女の子は元気なの?」
「最近はちょっとあの子具合が悪くて会えてないの。後で会いに行ってみる。」
「そっか。」
「ねぇ。健くん。この前は花火一緒に見れなくてごめんね。」
「全然良いよ。仕方ないよ。美希ちゃんが退院したら一緒に花火しようか。今のうちに花火セット買っとくよ。」
「え、嬉しい!やった!私線香花火がやりたい!」
「おっけー!あ。そろそろ面会終わる時間だね。帰るね。明日おばあちゃんが来るって言ってたけど大丈夫?」
「うん!おばあちゃんに会えるの楽しみ!またね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。またね。」
健くんがドアを開けて部屋を出ていった。
それとすれ違いで紅莉がニヤニヤしながら入ってきた。
「おやおや。彼氏かなんか?イチャついてるの聞いちゃった。」
「あー、盗み聞きしてたの!?」
「彼氏まぁまぁイケメンじゃん。」
「あー、見たの?」
「チラッとよ。チラッとー。」
そう言って紅莉が笑うもんだから、私もつられて笑った。
入院してからどんよりしていた病室がちょっとだけ明るくなった気がした。
「そうそう。星の写真集だよ!」
「え!見たい!彼氏が持ってきてくれたの?」
「まぁそんなとこー!」
「彼氏くん!良くやった!早く見よ!」
紅莉は目をキラキラさせて写真の中の星に想いを馳せていた。
夢中になって見ていた。
時間が経つのもすっかり忘れて。
「今何時?」
「6時過ぎだよ。」
「「あ!食事の時間!」」
私たちは叫んだ。
声が揃った事にまた笑った。
「じゃそろそろ帰るね。」
「うん。」
「連絡先交換しとく?」
「しとこ!」
食事が病院に運ばれてきた。
「刈谷さん最近ちょっと元気になってきたね。」
看護師さんがそう言った。
「友達が出来たんです。」
「そう。良かったわね。元気が1番だからね。」
確かに最近元気になったかもしれない。
初めて友だちが出来たんだ。
病院の味気のないご飯が最近美味しく感じるようになった。
ご飯食べ終わってケータイを見る。
紅莉にメッセージを送ろう。
「ご飯食べた?私はもう食べたよ。」
それから少しして返信がきた。
「食べたよ。今日は満月らしいよ。部屋から見れるかも!」
「そうなの?屋上とかで見れたら良いのにね。」
メッセージ送った後で私は眠くなっていつの間にか寝ていた。
ふと目が覚めた。
病院は真っ暗。
私はトイレに行こうとしてベッドから起き上がった。
ふと窓に目をやる。
まん丸で綺麗な色をした満月が病室の中を照らしている。
写真に撮って紅莉に見せてあげよ。
健くんにも見せよ。
そう思ってケータイのカメラで撮った。
メッセージを送ろとしたら紅莉からメッセージが入ってた。
「めっちゃ満月綺麗だよ!」というメッセージと写真が送られてきた。
「私も同じことしようとしてたの。」というメッセージと写真を送って少し微笑んだ。
健くんにも送った。
今日こんなことあったよーって。
ちょっと長文になったけど見てくれると嬉しいな。
いい夢が見れそう。
おやすみなさい。
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