第24章 しんどくなった

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第24章 しんどくなった

入院して1ヶ月が過ぎた。 窓を開けると秋の香りがしてくる。 夏には緑だった葉っぱもどんどん色が付いている。 今日の検診で私はあと1週間で退院出来ることになった。 「刈谷さん 。体調良くなってきてるので退院しても大丈夫です。ただ、無理は禁物です。あまり激しい運動とか、遠出とかは控えるようにお願いします。」 そう先生は私に告げた。 私は退院できる喜びと同時に朱莉ともっと話したかったっていう悲しみというよりかは寂しさを覚えた。 健くんにメールを送った。 「来週で退院出来るようになったよ!退院したら美味しいものを食べに連れってて!」 すぐにメールが来た。 「おめでとう!何処にでも連れてくよ!」 「健くんのオススメの所に行きたいよ。考えといてね!」 私はなんとも言えない高揚感に浸っていた。 その日の午後朱莉に会うために病室を訪ねた。 だけどそこにはいつもの朱莉居なくて、色々な管を身体に通された朱莉がそこには居た。 朱莉は最近容態が悪化してきたらしい。 病室には朱莉の母親らしき人が居た。 その人は私に気付き 「もしかして美希さん?」 「はい。でも、どうして私の名前を?」 「娘からよく聞いててね、あの子全然友だちとか居ないみたいだったけど、最近友だちが出来たって言っててね、凄く嬉しそうだったの。」 私は何も言えなかった。 いや、何も言いたくなかったって言うのが本音かもしれない。 口に出すと朱莉が体調を悪いことを認めそうで。 また、母親が口を開く。 「あの子ね星が見たいってずっと言ってたの。美希さんと美希さんの彼氏と3人で見たいって。星が綺麗な場所を教えてくれとか言われててね。星の絵が描きたいんだって。」 母親の目には涙が浮かんでいた。 「あの朱莉は大丈夫なんですか?」 私は堪らず聞いた。 「先生が言うには季節の変わり目でちょっと体調を崩しているだけだから大丈夫だろうって。」 母親がそう言ったがそんな訳はない。 だって尋常ではない管が身体につけられていたから。 だけど希望に縋りたい。 そんな思いが母親から伝わってきた。 病室を後にした。 虚しさと悲しさと何も出来ない歯痒さと、私は来週退院出来るっていう現実に嫌気がさして泣きそうになった。 誰にも言えない。 いや、言いたくない。 貴方はあなただからって言われるのがオチだから。 朱莉は死んでもないのに大袈裟って人は言うだろう。 でも、呼吸器をつけられて苦しそうに必死でもがいてる彼女を見たらしんどくなった。 1人でいたくなった。 いつもは誰かと居たいのに私はワガママだ。 屋上に登った。 雲行きが怪しくなって今にも降り出しそうな天気だ。 ベンチに座って空を睨んだ。 結局神様は居ない。 なんで人の事でこんなに思ってしんどくなってるんだろう?って考えた。 多分友だちだから。 好きだから。 大事だから。 涙が出てきた。 声を出して泣いた。 それを打ち消すかのように大雨が降ってきた。 私はベンチから立つ気力もなく呆然と雨に打たれていた。 気が付いたら私は病室に居た。 聞くところによると私が病室から居なくなったの看護師が探してくれたらしい。 私はこっぴどく怒られた。 そして疲れて私は瞼を閉じた。
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