第25章 ガーベラの花言葉

1/1
前へ
/27ページ
次へ

第25章 ガーベラの花言葉

雀の鳴き声で目が覚めた。 友だちが苦しんでるから力になりたいと思う。 けど、私は何も出来ない。 どうしていいかも分からない。 せめて何か形になるもので勇気づけたい。 私は花を送ることにした。 前に朱莉の病室を訪れた時にコップにいけられていた花を見ながら絵を書いているのを見たことがある。 その時は 「勝手に見ないでよー」 「ふふっ、ごめん」 そんな会話をしたのを思い出した。 なんの花を送ろうか迷った。 そういえばお母さんが好きだった花を思い出した。 ガーベラ。 確か、花言葉は希望とか前進とかっていう意味だった気がする。 私が母の日に花屋さんでよく分からずに買ったのお母さんが凄く喜んでくれたのを覚えてる。 その時に花言葉も教えて貰った。 買いに行こう。 私は病室をこっそり抜け出して近くの花屋に走った。 久しぶりに外に出た。 太陽が眩しい。 金木犀の香りがしてもう秋になったんだと実感した。 病院のすぐそばにある花屋に向かった。 「行っらしゃいませー」 明るくて高い声が聞こえる。 40代ぐらいの女性が1人で切り盛りしていた。 「あのすいません。ガーベラっていう花ありますか?」 「ありますよ。色はどれになさいますか?」 「色?色によって意味は違ってきます?」 「はい、そうですね。例えば赤だと神秘とか前進みたいな情熱の花言葉を持っています。白い方ですと希望、新しさ、可能性という意味を持っています。」 「そうなんですね。実は友だちが近くの病院で入院してて今必死に生死を彷徨ってる最中なんです。私は何も出来なくてせめて花だけでもあげたくて。」 私はそう店員さんに言った後に涙が出てきた。 多分迷惑な客だ。 店員さんはポケットからハンカチを取り出して私にそっと差し出した。 「ありがとうございます。」 「あなたの優しい想いは絶対に届きます。ガーベラは白の方がいいんじゃないでしょうか? 希望の言葉がピッタリだと思いますよ。」 「ありがとうございます。1本ください。」 「はい。お友達の体調が良くなることを祈っています。また来てくださいね。」 私は軽くお辞儀をして店を出た。 私はバレないように病院に入り、何事もなかったように病室に戻った。 朱莉の病室に花を持っていこう。 あ、でも花瓶が無い事に気付いた。 そういや使ってないコップがあったな。 今それで我慢して。 そう呟いてちょっと笑った。 多分、朱莉は 「美希はそういうところ抜けてるよねー。」 って言ってイタズラ顔で笑ってくるんだろう。 先週までは面会謝絶だったけど、今週から一般病棟に戻ってきた。 少しの間なら病室に入っても大丈夫となっていた。 私は花とコップを持って病室に向かった。 朱莉は静かにそして柔らかな表情をして寝ていた。 いつもツンツンしてて憎たらしい所もあるけど、不覚にも可愛いと思ってしまった。 多分私が男だったら一瞬で好きになって手のひらで転がされてるいるんだろう。 ガーベラをコップにいけた。 「朱莉頑張ったね。私は今週で退院だよ。毎日来れるかは分からないけどお見舞いに行ける時は来るから。今日ガーベラっていう花を買ってきたの。勝手に病室抜け出しちゃった。白のガーベラ。希望や前進の意味があるんだって。私も前を向く。朱莉も前を向いて生きて。でも、たまには泣いても、横向いても、振り向いても良いから。いつか元気になったらさ星を見に行こう。いつになっても良いから。」 朱莉が少し微笑んだ気がして嬉しかった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加