2.消えない罪を抱きながら

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2.消えない罪を抱きながら

雨宮先生の家に一泊したあの日から、一週間が経った。 「失礼します」 昼休み、ゼミ室の入り口の扉をコンコンと二回ノックしてから、ガチャッとドアノブを回した。 「白藤君! 先週振りだね!」 スーツ姿の雨宮先生が、今日も穏やかな優しい笑顔でこちらに振り向く。 一泊した翌日、宿泊のお礼のお菓子を渡す為にこのゼミ室にお邪魔したのだが、今日はその日振りに再びやって来た。 「先生、こんにちは。先週お借りした本を返しに来ました」 「もう読んでくれたの? どうだった?」 「理解しやすくて凄く面白かったです。この著者の方の別の作品も読んでみたくなりました」 読み始まるまでは、二次性別に関する著書と真剣に向き合えるかどうか不安もあったのだけれど、杞憂に終わった。本当に面白かったのだ。 すると突然、ゼミ室の中から女子学生が数名、わらわらと顔を出してきた。 「噂の白藤君だー! ほんとかっこいー!」 「かっこ良いというより、可愛いじゃない⁉︎」 「美少年!」 「それだー!」 えっと……。 恐らくこの人達は全員、ここのゼミ生なのだろう。 ゼミを選択するのは三年生からだから、全員先輩だと思われる。 ……女性からこうやって囲まれるのがどうにも苦手で、どう返答したら良いか分からず、言葉に詰まる。
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