スマホを誤送信しただけなのに…

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「約束してたのに、友達がこなくて。連絡したら、スマホの電波を、間違って受信した宇宙人が降りてきた。友達に、ドタキャンされたから、そのまま、宇宙人と1日、過ごした。」 そう話す彼女を、わたしは、ぼーっと見ていた。 「それで地球に戻ったら何もかも退屈に思えて、宇宙飛行士になるの?」 と、わたしは彼女に問いかける。 「ううん、宇宙へは行ってない。私は行ってない。それに宇宙飛行士は、よくユーフォ―に遇うって言うけど、みんな本当の事を何もわかってない」 そこで洗いざらいぶちまけてよ、とわたしは促す。 すると彼女は硬化した。 「仮に宇宙人に宇宙で出会ったとして、どうせ何を言ってもまとも聞かないんでしょ。だから私は行く。自分の目と耳で全てを確かめたい。茨の道だって親も先生もいさめる。そんなことはわかってる。でも私は、もう一度彼と話したい。」 「あなた、宇宙の話はしないの?」 わたしは訊くだけ野暮かなとも思った。二人だけの物語にしたい時もある。 「悪いけど話は出来ない。でも話してみようかな、って思っただけ。」 こんな風に、人の内面には、思ったことを行動に移すことができるから大丈夫かも。 その後、家に帰るまでの間、彼女の話が尽きることはなかった。 しかし、彼女の話を聞こうと思った時、彼の携帯電話にメッセージが入っているのを思い出す。 そのメッセージを見て、わたしは目の前の少女を信じざるを得なかった。 次の日の学校。 教室に入った彼女のスマートフォンに、メッセージが着信があった。 「もしもし?」 と、彼に話しかける。 「もしもし、星子君? あの後、どう?」 彼は心配そうに聞いてきた。 「うん。みんなすごく心配してくれたよ。でも大丈夫! 今、学校帰りだよ」 と、星子は彼の心配してくれているのが嬉しくてもう一度同じことを聞いた。 「そっか、よかった。でもよかった? 学校は?」 「うん。今日は、休んだ」 「そっか。まぁ、無理しないようにね」 「うん。ありがとう……」 そう言った次の瞬間、星子は彼の言葉が理解できなくなった。 時系列が狂っている。今しがた登校したばかりじゃないか。 どうして休んだことになっているのだろう。それに学校の帰りだなんて矛盾もはなはだしい。 「どうしたの? 気分でも悪いのか」 彼は星子を自分事のように案じた。 「え、いや、なんでもないの。今、学校帰りだって。じゃ、また明日」 そう言うと、彼は「また明日」と言い残して電話を切った。 時系列がおかしい。 因果律が狂ってる。 星子は気になって気になってしょうがない。それで彼を強引に呼び出した。 「ごめん。ちょっとだけ変かも」 予想以上に深刻そうな彼に星子は戸惑った。彼はまともだ。自分こそ体内時計が狂っているのだと釈明した。 反応はない。ただただ無言で微笑むだけ。 そして、彼の笑顔を見るとまた不安が襲ってきた。 「わたし、今、大丈夫かな? 本当は今日、学校行かなくちゃだよね。本当ののこと、何も言わずに」 「うん。大丈夫だよ。俺は君の彼女じゃないかもしれないけど、ただの友達として、なんでも言うこと聞いてあげるよ」 その笑顔は、嘘を言っているように見えた。 記憶が全然ない。とびとびの日常に何の意味があるのか すると彼は言った。 「宇宙飛行士になるんだろう? 地上の時制に何の価値もないよ。それに宇宙に出るならウラシマ効果や超光速に慣れておかなくっちゃいけないだろう。俺は君を変えに来たんだよ。もうすぐ俺のお母さんになる人を…」
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