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果てしない列に並びながら、リリアーナは右側の彼女に素朴な疑問をぶつけた。
「そういえばキャロル様、侍女はどうなさったのです?」
初めてキャロラインに会った日も彼女は侍女を連れていなかったが、それはお忍びで来たからだと思っていた。しかし今日も彼女は侍女を連れずにひとりで祭に来ている。途中まではあのミラという教育係がついていたのようなのだが、リリアーナたちと合流してからは完全に単独行動だった。
確かに、リリアーナとレティシアの周りには姿こそ隠しているものの、目立たないよう変装した護衛がついており、安全には違いない。
しかしそうはいっても、キャロラインほどの身分の人間ともなれば、身の回りの世話をするのは侍女の役目。きっと侍女にはひどく反対されただろうに、それを振り払ってでもひとりで行動する理由があるのだろうか?
リリアーナが色々と考えを巡らせていると、キャロラインはなんでもないようにサラリと答えた。
「わたくし、侍女はいないの」
「えっ!?」
リリアーナは思わず大きな声を上げた。前に並ぶ人々が何事かと振り返ったが、そんなことよりも衝撃的な言葉にまず耳を疑う。侍女がいない? そんなことがあり得るのだろうか。
左隣のレティシアが一瞬身を硬くしたのが伝わってくる。彼女も驚いたのだろう。今まで誰にも心を開けなかったレティシアにさえ、途切れず侍女がついていたというのに。侍女をつけないと言うだけではなく、そもそも存在すらしないなんて……前代未聞だ。
しかしキャロラインはなんともない、というように続ける。
「ほら……わたくし、ひとりでなんでもできるでしょう? だから、いらないのよ。侍女なんて」
「確かにキャロル様は優秀であらせられますが……」
「いらないの」
キッパリとした断定。有無を言わせない、突き放すようなその言い方に、リリアーナはもうそれ以上なにも聞けなくなった。
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