人生、終わった。

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 「レティシア様、本当に、申し訳ございませんでした。……大切なお人形を、壊してしまって」  レティシアの目からまた涙が溢れ出す。  やはりそうだった。彼女は怒っていた訳ではなかったのだ。顔を真っ赤にして、肩を震わせて、泣きそうになるのを必死に堪えていたのだ。  そう、思い返してみれば、扉の隙間から見えた彼女は確かに、今にも泣き出しそうな顔をしていた。  どういう訳かは知らないが……相当思い入れのある人形だったのだろうか。あの「悪魔令嬢」にこんなに弱々しい一面があったなんて。  噂話の中のレティシア・モンフォルルと目の前で泣きじゃくっているレティシア・モンフォルルとが一致しなくて混乱する。  今のレティシアはあまりに痛ましかった。今まで聞いたどんな極悪非道の噂も忘れてしまうほどに。そしてこれは不謹慎かもしれないが……泣いているレティシアは美しかった。  特にサファイアのような大きな瞳は涙で潤んで一層輝きを増し、魅入られてしまいそうなほど美しい。  彼女はそれこそ人形のように目鼻立ちが整っている。だからこそ、険しい表情がより恐ろしく見えるのだろう、とリリアーナは思った。  「あの、お人形ですが……人形職人に渡してきました。破片がきれいに残っているから、直せるだろう、とのことです」  「……ほ」  ほ、とひと文字発してから、レティシアはまた怒ったような顔になった。も、もしかして、勝手に直してしまったらいけなかっただろうか。せっかく一命を取り留めたというのに……またやらかした?  リリアーナは背中に流れる冷や汗を感じながら、レティシアの言葉を待った。  「ほん、とう?」
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