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「あら……こんな所に道があったかしら」
キャロラインはふいに立ち止まると、見慣れない小道を見つめた。獣道とは違う、明らかに人の手が加わった道。地面は踏み固められただけの簡素なものだったが、枝葉は枝切り鋏かなにかで切り揃えられていて、人ひとりが余裕を持って歩けそうな幅があった。
好奇心旺盛なキャロラインは、目新しい小道を指差した。
「こっちに行ってみましょう。泉の近くに出るかもしれないわ」
ジェイミーがなにか言う前にキャロラインはその小道に踏み入っていた。ジェイミーも黙ってキャロラインの後をついていく。人工的な道のようだし、危険はないだろう。
それよりも大きなバスケットが枝に引っかからないかということの方が心配で、ジェイミーはさっきよりも慎重になりながら歩みを進めた。
森でお茶をする時は、泉の近くの開けたところに敷物を敷いて過ごすのがお決まりだった。この小道は泉の方へと伸びているようだったので、確かに近道かもしれない。ジェイミーもなにも言わずにキャロラインを追った。
小道はやはり泉に続いているようだった。道の終わりは入り口とは違ってあまり人の手が入っておらず、草木が茂っていたが、少し除けてやれば通れそうだ。
「やっぱり、こっちは近道だったわね」
そう呟いて足早になるキャロライン。重いバスケットを持ったジェイミーは彼女についていけなくてふたりの距離は少しずつ離れていく。
それは、キャロラインが小道を抜けようと薮に手をかけた瞬間だった。
「キャアッ?!」
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