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『私は必要ありませんから』
それはキャロラインを傷つける言葉ではなく、自分を蔑む言葉だった。キャロラインのことが気に食わないというのなら、もっと違う言葉があったはずなのだ。
けれどジェイミーは最後にキャロラインを責める言葉ではなかった。きっとキャロラインは知らずのうちに、彼女を傷つけていたのだ。だから「必要ない」だなんて、悲しいことを言わせてしまった。
そう、ジェイミーが、キャロラインを裏切ったのではない。
キャロラインが、ジェイミーに裏切らせたのだ。
少なくとも、キャロラインはそう思っていた。だからこそ、彼女はジェイミーを恐れていた。もはやジェイミーの存在そのものが、キャロラインにとっての罪であり罰だったのだ。
だから、ジェイミーの話はキャロラインにとって意外なものだった。
顔を合わせたら、糾弾されるのだとばかり思っていた。ジェイミーを傷つけたことを。それなのに、どうしてそんなに苦しそうなのだろう。まるでジェイミーの方が罰せられているかのようだ。
続くジェイミーの言葉は、さらに意外なものだった。
「……申し訳、ございませんでした」
「え……?」
どうして。謝らなくちゃいけないのは、私の方なのに。
キャロラインは不意を突かれて咄嗟に言葉が出てこなかった。その沈黙を拒絶ととったのだろうか、ジェイミーは今にも泣き出しそうな顔になって、もう一度「申し訳ございませんでした」と呟いた。
「私、キャロライン様に謝りたかったんです。ずっと」
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