動かない「悪魔令嬢」

2/6
前へ
/127ページ
次へ
 あれから数日、驚くことに人形を壊したことへのお咎めはなかった。  直るものだったとはいえ、主人が大切にしている物を壊してしまったのだ。こういう場合たとえその主人が「悪魔令嬢」でなくとも、なんらかの罰が与えられて然るべきだと思うのだが……今のところなんの知らせもない。  リリアーナはレティシアのドレスに似合うアクセサリーを選びながら悶々と考えていた。  おそらくリリアーナが人形を壊したことは既に屋敷中に知れ渡っているだろう。それくらいの大事だ。しかし誰もなにも言ってこない。レティシア嬢のご両親すら、なにも仰らない。それどころか黙って修理代を払ってくださっている。リリアーナにとってはそこそこの大金だったが、やはりなにも追求されなかった。  リリアーナはもはや自分が責められないことに罪悪感を覚え始めていた。  だって、失敗を犯した自覚は大いにあるのだ。それなのにまるで腫れ物のように扱われて……居心地が悪すぎる。いっそ誰か罰してほしい。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加