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「……あの」
「うわ!?」
耳元で急に声がしたものだから、手にしたブローチを取り落としそうになる。いつの間にか隣にきていたレティシアに上からジロリと見下げられてリリアーナは一瞬怖気付いた。
しかし、レティシアが不機嫌ではないということはすぐに分かった。彼女の目つきは相変わらず鋭かったが、手を出されるわけでも、罵倒されるわけでもなかったからだ。
その代わり彼女はアクセサリーの入ったガラス箱の中からローズクオーツの耳飾りを指差した。それをそのままつけて差し上げると、レティシアは真顔でコクリと頷いた。
ここ数日、分からないことの方が多かったが、分かったことも少しある。レティシア様は恐ろしいが……ただ、それだけだということだ。
彼女は付け入る隙のない美人だからか、黙っていても気の強さが滲み出る。それにすらっとしていて背の高い彼女が豪奢なドレスを着ると妙な威圧感も出る。加えて目もつり目だから、少しすがめただけでも人を射殺しそうな迫力がある。
けれど、それだけなのだ。実害はない。今のところ。
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