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今は泳がされているだけで、ジワジワと追い詰めて苦しめるつもりなのだろうか。いや、それにしてはあまりに毒気がなさすぎる気もする。
リリアーナはまた答えの出ない疑問をぐるぐると考えながら扉を開いた。西向きの窓から入った優しい朝日がぼんやりと廊下を照らしている。リリアーナはレティシアの少し後ろを歩きながら、彼女の耳元で揺れるローズクオーツを見つめた。
自ら選んだということは、これがレティシア様の好みなのだろう。「悪魔令嬢」というくらいだから、いつも血のような深紅やカラスの羽根のようなどんよりとした色のドレスを着ていると思い込んでいた。
もちろん深紅や黒のドレスもお持ちだが、そういった色を好んでいるのはどちらかというと奥様で、レティシア様ご自身はいつも桃色や若草色などの淡い色ばかり選ぶ。
わが子のように人形を大切にし、かわいらしい色を好む、「悪魔令嬢」レティシア・モンフォルル。知れば知るほど、分からなくなるが、だからこそ、もっと知りたい。そうすればこのモヤモヤも晴れる気がした。
リリアーナは前を行くレティシアの後ろ姿を改めて見つめた。彼女が一歩踏み出すたび、きれいに結った金髪が朝日に当たってきらめいている。
絹のように艶やかな金髪はあまりにも眩しくて、リリアーナは少しだけ目を細めた。
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