絶対零度の瞳

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 そんな中、リリアーナだけはじっと考えていた。確かにレティシアはなにかに怒っていたようだった。けれど、わざわざシェフを呼び出したということは、なにか理由があるはずなのだ。  ここ数日、レティシアの声を聞いたのは数えられるほどしかなかったが、そのどれもに意味があった。どうしても必要な時だけ、彼女は言葉少なに訴えてくるのだ。  だからシェフを呼び出したのにもきっと理由があったのだろうと思う。少なくとも、意味もなくただ怖がらせ、衰弱させるためではない。  リリアーナはずっと考えていたが、答えは出そうになかった。なぜなら、その理由を知っているのはこの世にたったひとりだけだから。レティシアがネグリジェに着替えるのを手伝い終わると、リリアーナは勇気を振り絞って彼女に話しかけた。  「レティシア様」  レティシアはビクリと肩を震わせた。夕食後から気分が優れないようで、俯いたままじっと押し黙っている。リリアーナは彼女と目を合わせるように跪き、緊張で震える拳を握りしめた。  「お話があります」  リリアーナがそう告げた瞬間、上からポタリ、と水滴が落ちてきて、赤い絨毯に丸い染みができた。
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