絶対零度の瞳

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 「……いや!!」  それは今まで聞いたこともない大きな声だった。顔を上げたレティシアは、ボロボロと泣きながら唇を食いしばっていた。そうしないと泣き喚いていまいそうだったのだ。  だって、せっかく、彼女と出会えたのに。  「レ……レティシア様……?」  「いやっ……あなたも、あなたまでっ……」  言葉を続けようとするが、上手く喋れない。レティシアはしゃくり上げながら、勉強机の上の日記帳とペンを取り、千切ったページに文字を殴り書いた。  “あなたも、辞めてしまうのでしょう”  押し付けられたクシャクシャの紙切れには、乱暴だが読みやすい字でそう書いてあった。リリアーナはその一文を読むと驚いて顔を上げた。涙に濡れたレティシアの目とリリアーナの目が丁度かち合う。  「違います! 私は、レティシア様のお気持ちを伺いたくて!」  「え……?」  止まらない涙を拭いながら、レティシアは小さく目を見開いた。その目はやっぱり吸い込まれそうなほどにきれいで、リリアーナはその時ようやく、本当のレティシア・モンフォルルと出会えたような気がした。
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