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だからリリアーナは、また「誰か」が傷つく前にこの負の連鎖を止めたいと思ってしまった。もちろんその「誰か」の中にはレティシアも入っている。
だからこそ、レティシアには変わって欲しい。これはエゴかもしれないけれど、リリアーナは彼女が傷つくのを見たくなかった。
「レティシア様は、変わりたくないんですか?」
「……それは」
レティシアはそれだけ言って黙り込んだ。自分で書いた文字に目を落とす。
“それはすごく、難しいわ”
彼女自身もきっと変わりたいと思っているのだ。だから「難しい」なんて言葉を使う。それは挑戦したことのある人の言葉だ。
「……変われる、かしら」
「もちろんです!」
レティシアの小さな呟きを、リリアーナはしっかり聞いていた。やっぱり彼女は、変わりたいと思っているのだ。小さいけれど確かに灯る勇気の火に、リリアーナは胸の奥がポカポカと暖かくなるのを感じた。
変わって欲しいと思うのはリリアーナのエゴだけれど、レティシアが変わりたいと願うなら、精一杯彼女を支えよう。
それが侍女としての務めというものだ。
「まずは……笑顔ですよっ!」
そう言ってリリアーナは、鏡に向かってニッコリと微笑んでみせた。
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