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「レティシア様! これはいい機会です、お茶会に参加なされては?」
そんな提案をせずともレティシアも参加するのが普通なのだが、極度の人見知りである彼女は身内のお茶会ですら不参加を貫いていた。その証拠にアリシア夫人もレティシアには声をかけてこない。
けれど、リリアーナはこの機会を逃す手はないと思っていた。人見知りを直そうと特訓してはいるが、それにも限界がある。リリアーナは一番手っ取り早くて効果的なのは多くの人々と関わることだと考えていた。このお茶会はその第一歩だ。
もちろんリリアーナもレティシアを強引に社交の場へ引っ張りだそうとしている訳ではない。ちゃんと彼女に配慮した上の判断だ。いつものお茶会にはいかにもレティシアが怯えそうな気取った貴族のご婦人たちが集まるが、今回のお茶会に呼ばれるのは叔母と従姉妹である。レティシアも顔くらいは知っているだろうし、練習にはうってつけだと思ったのだ。
しかし、机の下から出てきた手帳にはいつもより乱れた文字が記されていた。
“わたくしには無理よ!”
「大丈夫ですよ! 困ったら私がお助け致します!」
ヒソヒソと言い合いをしていると、娘とその侍女の不審な様子に気づいたモンフォルル公爵が片眉を上げた。
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