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「……レティシア? どうかしたかい?」
レティシアの肩が目に見えて分かるくらいビクッと跳ね上がる。
反応があること自体が珍しいのに、こうな風にあからさまに驚いたのが分かるなんて、一体どうしたことだろうか。モンフォルル公爵は不審そうに眉をひそめた。アリシア夫人も驚いたようで、目を丸くしてジッとわが子を見つめている。
レティシアがなにか言い出す前に、リリアーナはすかさず前に出て一礼した。
「恐れながら、ご主人様」
「なんだ。言ってみなさい」
「レティシア様もそのお茶会に参加なさりたいと」
レティシアがギョッとした様子でリリアーナを見上げる。今日のレティシアは今までに見たことがないほど表情が豊かだ、とリリアーナは思った。特に今の顔は完璧だ。完璧に困惑している。
レティシアが困惑しているということよりも、練習の成果が目に見えて現れていることに嬉しくなったリリアーナは、彼女ににっこりと笑いかけた。
ものすごく困っているというのになぜか笑いかけてくる侍女に、レティシアは恐怖と混乱を覚えながらも手帳にペンを走らせる。
しかしレティシアが拒否するよりも早く、アリシア夫人が嬉しそうに声を弾ませた。
「レティシアがそんな風に言うなんて珍しいわね。とびきり美味しいお菓子を用意させましょう」
「そうだな。レティシア、この間仕立てたばかりの藍色のドレスがあるだろう。それを着ていくといい」
モンフォルル公爵も目を細めて微笑んでいる。両親が嬉しそうにお茶会の話を進めはじめたものだから、「やめる」などと言い出せなくなったレティシアは、もう、頷くしかなかった。
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