恐怖のお茶会デビュー

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 そして当のレティシアはというと……  ……特訓も虚しく、身体も表情もカチコチに固まってしまっていた。元々色白の肌は血の気が引いてより白く、おろしたての藍色のドレスもなんだか色褪せて見える。  レティシアがカチコチに固まっているのにはもうひとつ訳があった。これは完全に誤算だったのだが、お茶会にはシャーロット親子以外にも参加者がいたのだ。  アリシア夫人の友人らしきご婦人が数人。恐らく毎日のようにこの会に参加しているアリシア夫人の馴染みのお茶友だちなのだろう。  レティシアが自室を出るのは食事と庭の散歩の時くらいで、それ以外はずっと部屋こもって本を読んで過ごすから、レティシアもリリアーナもそんな事情など全く知らなかった。てっきり身内だけのお茶会だと思っていたのに。  もちろんご婦人たちにとってもレティシアがお茶会に参加することは青天の霹靂だった。その証拠に皆レティシア以上に真っ青な顔でぎこちない笑顔を浮かべている。まさか自分たちがあの「悪魔令嬢」とお茶の席を共にするなんて夢にも思わなかったのだろう。  ご機嫌なアリシア夫人と朗らかなシャーロットは、両方が両方とも蛇に睨まれた蛙状態になっていることに気づいていないようだ。  リリアーナは考えを巡らせていた。ここは私がどうにかしなくてはいけない。  机の下から出てきた手帳には今までで一番読みづらい字で“知らない人” “帰りたい”と書いてある。リリアーナはさすがに申し訳ないことをした、と思いながら小声でレティシアを励ました。  「大丈夫ですよ、なにかあれば私が代わりにお話ししますから。合図したらお口元を隠して、私になにか言う振りをしてください」
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