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「あ……わたくしっ……」
部屋の扉を閉めた瞬間、レティシアはドレスが汚れるのも構わずに床にへたり込んでさめざめと泣き出した。
きっと道すがら自分がしたことを振り返っていたのだろう。冷静になった彼女は、サーシャを傷つけたこと、それを謝ることもできなかったこと、なにもかも上手くできない自分の惨めさに涙を流すしかなかった。
彼女の肩を抱きながら、リリアーナもかなりの責任を感じていた。
もう少しちゃんと調べていれば。レティシアが安心できるように配慮していれば。レティシアが頼れるのはリリアーナだけだったのに、その自分がしっかりしていなかったから。
レティシアが泣きじゃくる声だけが部屋中に響いている。リリアーナは彼女になんと声をかけたらいいか分からなかった。本当は一歩踏み出したその勇気を称えたかったけれど、今の彼女にはきっと届かない。励ましも、慰めも、どんな言葉も。
だけど私は謝らなければならない、とリリアーナは思った。いや、謝りたかった。届かないとしても。それが今リリアーナにできる精一杯だから。
意を決したリリアーナが口を開こうとしたその時だった。
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