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サーシャは跪いて、レティシアのケープをそっと外した。お茶会の時の冷たい表情とはかけ離れた、泣き崩れた顔が現れる。サーシャは少し驚いたようだったが、すぐに小さく笑って言った。
「私のドレス、褒めてくれてありがとう」
レティシアは、また泣き出しそうになるのを堪えた。言わなくちゃ。今言えなかったら、きっと私は変われない。変わらなくちゃ。大丈夫、たくさん練習したんだもの。
そして必死に言葉を絞り出す。その声はか細かったけれど、確かにサーシャの耳に届いた。
「……ごめん、なさい」
サーシャは彼女の母にそっくりの太陽のような笑顔でニコッと笑った。レティシアは彼女の笑顔を眩しいと思ったが、決してわずらわしいとは思わなかった。その暖かい笑顔を、そのまま受け止める。
「いいのよ。すぐに洗ってもらったからシミにもならなかったし。私こそドレスを貸してもらってごめんなさいね」
サーシャは立ち上がると2人の前でクルリと一回転して見せた。今日の空のように晴れやかな、スカイブルーのドレスがフワリと翻る。
「どう? これも似合ってるでしょう」
ニッコリ笑ったサーシャに、レティシアは練習中のぎこちない笑顔で、こくり、と頷いたのだった。
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