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お茶会に戻るサーシャを見送って、リリアーナは今度こそレティシアに謝らなければ、と思った。
「レティシア様」と彼女の名前を呼んで言い淀む。今はそれよりもすぐに伝えたい言葉があった。リリアーナは少し迷ったが、やはり堪えきれなくて顔を綻ばせた。
「レティシア様、すごいです! サーシャ様と、ちゃんとお話ししていらっしゃいました!」
そう、あのレティシアが他者と友好的に関われたのだ。これはリリアーナが侍女になってから初めてのことだった。これを喜ばずにいられるだろうか。小さくとも偉大なる第一歩に、リリアーナは胸が熱くなっていた。
レティシアは恥ずかしそうに目線を泳がせると、手帳にペンを走らせた。
“変じゃなかったかしら”
「そんなこと! サーシャ様も嬉しそうにしてらしたじゃないですか」
リリアーナはレティシアの両手を取ってギュッと握りしめた。許しも聞かずに勝手に手に触れるなんて、おこがましいことだったかもしれない。けれどリリアーナはどうしてもこの感動をレティシアと分かち合いたかった。そう思ったら身体が先に動いてしまった。
レティシアは戸惑ったようで僅かに肩を震わせたが、彼女の手を振り解くことはしなかった。リリアーナは、ガラス玉のような青い瞳を真っ直ぐに見つめると、思いが伝わるように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「本当に、よかったです」
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