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青色の瞳が涙で潤んで、サファイアのように美しく輝く。レティシアはまた泣き出しそうになっていたが、彼女の表情はいつものように怒ったような苦しそうなものではなかった。それ笑顔ではないけれど、優しくて、力が抜けたような、きっと心からの安堵の表情。
「あの……」
それだけ言ってレティシアはまた沈黙した。なにか言いたげに、口を開いては閉じる。中々言葉が出てこない彼女を急かすことなく、リリアーナは静かに次の言葉を待った。
レティシアが意を決したように、大きく息を吸う。
「あなたの……リリアーナの、おかげ、よ」
レティシアの頬が真っ赤に染まっていく。途切れ途切れに言葉を続けて、それでも足りなくなった息をもう一度吸って、青い瞳はリリアーナを真っ直ぐに見つめ返した。
「ありがとう」
それだけ言うと、レティシアはすぐに顔を逸らしてしまった。思いを伝えることも、他人の目を見ることも、レティシアにはきっと大変なことだったのだろう。その証拠に彼女は指先まで真っ赤になっている。
そうやって懸命に伝えられた感謝の言葉は、リリアーナの胸に深く沁みていった。
「レティシア様……」
羞恥のせいか声が出せなくなってしまったレティシアは、文字で饒舌に語り始める。
“ずっと伝えたかったの。あの子が壊れてしまった時も、私のせいで彼が辞めてしまった時も、私が悲しい時、あなたはいつだって側にいてくれたわ”
手帳の上をスラスラと滑るペンがはた、と止まった。書き淀んでいる訳ではなく、彼女の目に溜まった涙が視界を歪ませたせいだった。
指先で涙の粒を拭いながら、レティシアは続けた。
“わたくしは、いつもひとりだったから、嬉しかった”
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