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彼女の孤独の一端に触れたような気になって、リリアーナの胸がギュッと苦しくなる。
彼女の両親は特別厳しい方々ではないが、「普通」の親でもない。なぜなら彼らは由緒正しいモンフォルル家の顔。きっとレティシアは幼い頃からモンフォルル家のひとり娘としての立ち振る舞いを求められてきたのだろう。それも、当然のように。
側にいてくれるはずの侍女は入れ替わり立ち替わり辞めてしまって、彼女には甘えられる人がいなかったのだ。ずっと。だから、ただ「普通」に接してくれるだけで嬉しく感じてしまうのだろう。
「……それが私の務めですから。いつだってお側にいますよ」
リリアーナは胸の苦しさをレティシアに悟られないように微笑んだ。憐憫はきっと彼女を傷つけると思ったから。
「私、そんな風に思っていただけているなんて思わなかったです。今日だって私が迂闊だったせいでレティシア様を傷つけてしまったって……」
“あなたがそんな風に思うことないわ”
リリアーナは頭を振りかぶって、ずっと握っていた彼女の手を再びギュッと握り直した。
「いいえ、私レティシア様のこと全然考えられてなかったです。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げる。目には見えなかったが、頭の上でレティシアが慌てているような気配がした。きっと「頭を下げないで」などと言いたいのだろう。リリアーナは顔を伏せたままクスリと笑って、これ以上彼女を困らせないよう顔を上げた。
レティシアは案の定怒ったような顔で困っていた。リリアーナは、彼女がさっきしてくれたように彼女の目を真っ直ぐ見つめる。
「私……もっともっとレティシア様のことお支えできるよう頑張りますね」
真っ直ぐな目と、初めて捧げられた忠誠の言葉。レティシアは茹で上がったように真っ赤になって、俯きがちに頷いた。
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