地獄への招待状

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 “お茶会を台無しにしてしまったから、お詫びの品を贈りたい”と言い出したのはレティシアだった。  「それなら手紙を添えてはどうか」と提案したのはリリアーナ。対面で話すのが極端に苦手なレティシアも、文字でならコミュニケーションが取れると気づいたのはほんの最近の話。誰かに手紙を書くなんて考えつきもしなかったレティシアは、リリアーナの提案に少し戸惑ったようだが“書いてみるわ”と頷いた。  レティシアは極度に人付き合いが下手だが、繊細で優しい人だ。手紙ならきっとその人柄が伝わるはず。そうしたら少しは誤解がとけるだろう。信頼関係は積み重ねが大切。こうやって少しずつ積み上げていけばいい。  「それでは、流行りの店に声をかけて参ります」  リリアーナはそう言って一礼する。しかしレティシアは集中していて彼女の声が聞こえていないようだった。机へ向かうレティシアの背中からは真剣さが滲み出ていた。  これだけ真摯に向き合おうとしていらっしゃるのだもの。きっと上手くいく。  リリアーナは一生懸命な背中にひっそりとエールを送ると、静かに部屋を後にした。
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