作戦名は「壁の花」?

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 レティシアは自室に戻ると、くず折れるようにベッドへ座り込んだ。既に気を失いそうな彼女に熱めのハーブティーを淹れながら、リリアーナは考えていた。  以前までのレティシアならモンフォルル公爵も舞踏会の誘いを断って、いつも通り夫妻だけで参加することになっていたかもしれない。しかし彼らは、先日自らお茶会へ出ると言い出したレティシアを見ている。きっと今ならレティシアも参加してくれると踏んだのだろう。  実はアリシア夫人の中で、あのお茶会は大成功だった、ということになっている。  レティシアがサーシャのドレスにお茶をかけてしまった後、お茶会の席に戻ったサーシャが上手く取り合ってくれたらしく、ありがたいことに会は和やかに終了したそうなのだ。  しかもシャーロットとサーシャはお詫びの品を大変気に入ったようで、お礼の手紙まで返ってきていた。娘宛に下心のない手紙が届くことなど初めてのことだったため、アリシア夫人はいたく感激してしまったらしい。  それだけだったら別によかったのだ。リリアーナも嬉しかったし、お茶会を台無しにしてしまったと気に病んでいたレティシアもホッとした様子だった。けれどまさかこんな事になろうとは。おそらく今回モンフォルル公爵の背中を押したのもアリシア夫人なのだろう。  レティシアにとってあのお茶会はなんとか乗り越えた山だったのだが、彼らがそんなことを知る筈もない。双方の思いがすれ違う中、リリアーナは向き合わなければならない現実を直視した。
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