作戦名は「壁の花」?

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 彼女の目に入ってきたのは、枕元に置かれたレティシアのお気に入りの人形。レティシアそっくりに着せ替えられたその人形は、レティシアと同じ色の青いガラスの目でこちらを見つめている。  「……替え玉」  レティシアは、急によく分からないことを言い出したリリアーナを不思議そうに見上げている。リリアーナは頭に浮かんだ突拍子もない案を振り払った。仮面でも着けているならまだしも、顔が見えてしまう舞踏会では替え玉など無謀な話だ。いくら彼女が引きこもりでも、両親の目はごまかせない。それにレティシアは背も高い。リリアーナでは足らないし、他に信用できる協力者も望めそうにない。  だけど、だったら────?  リリアーナは自分の身体をまじまじと見つめた。レティシアに比べるとやや低く見えるかもしれないが、これでも背は高い方だと思う。髪も目も平凡な色。これならいける……かもしれない。  いや、かもしれないじゃない。もう、これを成功させるしかない!  決意を固めたリリアーナがグッと拳を握りしめる一方で、レティシアはやっぱりおかしな様子の彼女を不安そうに見つめていた。
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