いざ、決戦の舞台へ。

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 リリアーナは隣を歩くレティシアを盗み見ながら、ほう、とため息をついた。  確かに彼女の両親たちは美しいけれど、今宵のレティシアは一際美しいと思う。暗がりの下ではただのブルーに見えたドレスは、明かりに照らされるたび緑や紫がかった色に反射している。モンフォルル家にだけ献上されている、特別な布。レティシアのお披露目だから、と両親が選んだものだ。  レティシアが歩を進めるたびドレスに縫い付けられたクリスタルが星のように瞬く。彼女はまるで夜空を纏っているかのようだった。金の御髪にはモンフォルル家に代々伝わる金のティアラが輝いている。夜の女神が舞い降りて来たのだと言われたら信じてしまいそうだ。彼女はそれほどまでに近寄り難い美しさを放っていた。  「皆、揃ったようだな」  レティシアに見惚れていたリリアーナはハッと前を向く。周囲の騒めきも自然と鎮まって、皆の注目はホールの最奥へと集まる。  皆の視線の先にいたのは白金の髭をたくわえた男性。同じく白金の長い巻毛を後ろで一つに括り、深緑のローブをゆったりと羽織って、彼は上品な微笑みをたたえていた。  その風貌のせいか、落ち着いた雰囲気のせいか、一見かなり歳を重ねているように見えるが、よく見れば礼服の上からも分かるほど張りのある筋肉質に、艶やかな肌。歳は恐らく、モンフォルル公爵と同じくらいだろう。背丈は彼の方が少し小さいか。しかしなぜだか、公爵よりもずっと大きく見える。一瞬で空間を支配してしまうほどの存在感。  彼は聡明そうなグレーの瞳を細めると、彼は再び口を開いた。  「今宵はお集まりいただきありがたく思う。皆、存分に踊り、宴を楽しんでいってくれ」  そう、彼こそがこの舞踏会の主催者、エデンガード王だ。
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