人生、終わった。

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 しかし、なんと驚くことにリリアーナは「悪魔との契約」「終身刑」などと称され最も忌避されている、レティシア嬢の侍女として彼女に仕えている。  いや、もう仕えて「いた」というべきかもしれないが。  もちろん、リリアーナも好き好んでそんな役目を引き受けた訳ではない。あけすけに言ってしまえば彼女の目当てはお金と権力だった。レティシアが本当に悪魔だったとしても、リリアーナにとって公爵令嬢の侍女という地位は抗えないほど魅力的だったのだ。  なにせ彼女の家は今や没落寸前、庶民とさほど変わらない生活を送る貧乏貴族。  街の外れの片田舎に屋敷を構えるフォスター家の領地といえばほとんどが農地なのだが、近年続いている原因不明の不作により領民も生きるだけで精一杯。  見栄を張るのが貴族の仕事なのに、リリアーナに張れるものと言ったら使い込んで向こうが透けて見えるほどペラペラになったシーツくらいだ。  たった1人の使用人であるエミリーも使用人とは名ばかりで、ほとんど家族同然。もちろんお給金もまともに払えていない。稼ぎに出ようにも父は身体が弱く、弟はまだ幼い。良家から嫁いできた母などは見る間に貧しくなっていく暮らしについていくのも大変だろうに、手作りの刺繍のハンカチーフなどを売って精一杯家計を助けてくれていた。
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