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「レティシア様?! どうしてここに?!」
人垣を押しのけてレティシアの目の前に現れたのは、両手に飲み物や菓子などを抱えたリリアーナだった。ヘレナが叫ぶように発した「モンフォルル家のご息女」という言葉を聞いた彼女は、何事かと慌てて駆けつけてきたのだ。
「リリアーナ……」
レティシアの瞳が涙で潤む。事情は全く分からなかったが、リリアーナは飲み物やら食べ物やらを放り投げてレティシアに駆け寄った。
「申し訳ございません! なにがあったのかは存じ上げませんが、レティシア様はとても疲れていらっしゃって……今は失礼させて頂いてもよろしいでしょうか」
そう言ってノア王子の代わりにレティシアを支えようとするが、力が抜け切った彼女の身体はリリアーナだけで支えることができず、くずおれそうになる。
「大丈夫かい」と王子が囁くと、ヘレナはリリアーナのことも睨みつけた。リリアーナは焦りながら「申し訳ございません」と返す。
一体どうしてレティシア様がここに?そしてどうしてこんなことに?ヘレナ様はお怒りの様子だし、レティシア様は具合が悪そうだし、どうしよう。
大混乱しているリリアーナは精神的にも物理的にも動けなくなっていた。レティシアはホッとしたのか、もうほとんど意識を手放してしまった様子で、グッタリとしている。謝罪や説明、やることは沢山あるが、今はとにかくレティシアをこの場から離したい。しかしリリアーナでは背の高い彼女を支えきれない。
そんな時、人垣の中から1人のご婦人が進み出た。
「わたくしでよければお手伝い致しますわ」
パートナーの男性が戸惑った様子でご婦人を止めようとするが、彼女はドレスが床に擦れるのも構わずレティシアの片脇を抱えた。
「……わたくしも」
そう言ったまた別のご婦人が駆け寄ってくる。彼女の手には温かいスープと水差し。なぜかは分からないが、どうやら彼女たちはレティシアとリリアーナを助けてくれるようだった。
「参りましょう。こちらに横になれるお部屋があるわ」
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