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あくる日の午後、1階の玄関ホールから騒がしい声が聞こえてきた。あまりに長い間騒ぎ立てているものだから、部屋にこもっているレティシアもさすがに不安そうに下の様子を伺っている。
「私、見て参ります」
レティシアの宝飾品の手入れをしていたリリアーナがすっくと立ち上がった。
レティシアはブンブンと首を横に振って彼女を止めようとしたが、リリアーナの我慢はもう限界に達していた。ここまでくるともう、やかましいとかそんなことはどうでもよかった。
この騒ぎの元凶が気になって気になって仕方がない。
嫌悪感や不安感よりも、圧倒的に好奇心が優っている。時折大胆な行動に出るリリアーナは、気持ちの上でもかなり勇敢な方だった。
“どうしても行くというのなら、わたくしも行く”
そしてレティシアはどうしてもリリアーナと一緒にいたいらしかった。舞踏会の時のことがあったせいで、彼女は特に、ひとりで部屋に置いていかれることには敏感になっていた。
「ですが、もしかしたら危険な状況かも……」
“それだったら、とっくの昔に逃げるよう言われているわ”
「……確かに」
リリアーナに影響されたのか、よっぽどひとりになるのが嫌なのか、レティシアは震えながらも立ち上がった。そのままリリアーナに近づいていって、彼女のドレスのスカートをひしと掴む。
「……危なかったら、すぐに戻りましょうね」
好奇心に負けたリリアーナはレティシアを背にして歩き出す。レティシアは彼女の背中を見つめながらコクリと頷いた。
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