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「キャロライン様でございましたか……! 大変失礼致しました」
リリアーナは慌てて頭を下げる。キャロラインは「いいのよ、顔をお上げになって」と言って微笑んだ。
レティシアはまだピンときていないようだが、パープラー家といえばモンフォルル家の分家で、その中でもそれなりに力を持っている名家だ。そしてそこの長女であるキャロライン・パープラーは大変な才女で有名で、見目も麗しいことから「パープラーの麗しき聖女」とあだ名されている。
リリアーナは彼女が思っていたよりも有名人だったことに驚いていた。
彼女があの「パープラーの麗しき聖女」なのか。
「麗しき聖女」とはかけ離れた猛々しい姿を見てしまっていたので、噂話とこの目の前の彼女とが全く繋がらなかった。
確かに、納得はできる。
くりっとした大きなエメラルドの瞳に、色素の薄いミルクティー色のウェーブヘアー。見た目だけなら麗しく儚げな深窓の令嬢だ。
「一度見たら忘れない」という彼女の言葉通り、リリアーナの完璧な変装を見破ったことからも才女であることは間違いではないのだろう。
リリアーナは噂のイメージをそのまま素直に受け取るのはよくないということを再確認していた。
レティシアの噂に比べればまだまともな伝聞だとは思うが……少なくとも「聖女」という言葉のイメージから彼女を連想することはできないだろう。「パープラーの麗しき烈女」とかなら気づけたかもしれない。
「それで? あなたのお名前は?」
にっこり笑ったキャロラインの目はレティシアに一切向けられることなくリリアーナを見つめている。
「私は……リリアーナ、と申します」
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