人生、終わった。

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 「出て、行って」  リリアーナは恐る恐る顔を上げた。レティシアの声は震えていて彼女がまだ怒っていることは明確だったが、レティシアはそれ以上なにも言わず、すっと扉の方を指さした。リリアーナは思わず飛び出しそうになった「それだけ?」という言葉を飲み込んだ。  「……かしこまりました」  リリアーナはもう一度跪礼すると、人形を抱えて部屋から出た。正直拍子抜けだったが、とりあえず今この瞬間の命は助かったようだった。  * * *  職人に壊れた人間を預けたリリアーナは、足音を吸い込む上質なカーペットの上をぽてぽてと歩きながら、思案していた。  これはつまりお咎めなしということだろうか。いや、後から処分が言い渡されるのかもしれない。だって、閉まる扉の隙間からチラリと見えたレティシア様はやっぱり真っ赤な顔をしていたもの。  震える拳、眉間には皺、ギュッと食いしばられた白い唇。特に目は恐ろしいほどに鋭かった。キッとつり上がった目。青い瞳は冷やかな色をしていたが、白目は真っ赤に充血していて……  と、そこまで思い出して、リリアーナは違和感を覚えた。  なにかおかしい。そもそも噂によるとレティシア様は怒ると衝動的に行動するお人だという話だった。しかし彼女は叫び声ひとつ上げず、自室からリリアーナを締め出しただけだった。  それに扉の隙間から見えた彼女は、よく考えれば、どう見ても。  頭の中にボンヤリとかかっていたモヤが少しずつ晴れていき、真実の姿があらわになっていく。  気づけばリリアーナは踵を返し、レティシアの部屋へと駆け出していた。
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