でたらめ先生のうそつき授業・お母さん編

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当時は赤ちゃんもたくましかった。 生まれて30分もすればハイハイができるようになっていた。 今みたいにすぐ泣くような軟弱者の赤ちゃんとは違うんだよ。 だから生まれて一時間後には、街に出て牝牛のおっぱいに吸い付いていた。 今でもインドでは牛が神聖な動物な動物として大事にされているけど、バグダードでも昔はそうだったんだ。 だって当時の人の育ての親は牛なんだからね。まさに牛こそが人類の母と言える。 残念ながらバグダードではその風習は廃れてしまって、今の人たちは牛と見ると自動的に焼肉のタレの匂いを思い浮かべるようになってしまったみたいだけどね。 さて、そうやって育った赤ちゃんだけど、物心がついてくると、子どもにとって自然な疑問が芽生えてくる。 僕たちは一体どこから来たんだろう? 赤ちゃん病院には、お腹の大きなお母さんがひっきりなしにやってくる。 そこでお腹をすっきりさせると、またどこかへと旅立っていく。 どうやら自分もこうやってお母さんのお腹の中から生まれたらしい。 ということは、この中に自分のお母さんがいるに違いない。 それで子どもはやってくるお母さんたちをチェックする。 もし自分と顔が似ている人がいれば、その人がお母さんである可能性は高い。 それでそういう人を見つけると、後をついていくんだ。 でも普通は追いつけない。大人の方が足が速いからね。 でも中には足の遅い女の人もいれば、足の速い子どももいる。 そういうときには、子どもがお母さんを追い越してしまうんだ。 でもそれだと子どもはこの人が自分のお母さんなわけないと思ってしまう。 というのは、当時の伝承では、子どもは実の母親より速く歩くことはできないと信じられていたからなんだ。 だから旅の途中で追いついたとしても、追いついてしまったということは、それは自分のお母さんではないということになる。 まあ、これは余談だけどね。 それより、じゃあお父さんはどうしていたんだろうっていう疑問が沸いてきていると思う。 当時の人だって、お母さんだけで子どもが産めたわけではない。 当然どこかでお父さんと出会わなくてはいけない。 ところがお母さんはバグダードから徒歩で半年くらいのところを行ったり来たりしている。 だから必然的にお父さんもバグダードから徒歩で半年くらいのところを行ったり来たりしていたんだ。
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