でたらめ先生のうそつき授業・お母さん編

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はじめのうちは足並みを揃えて行ったり来たりしている。 でもそのうちにお母さんの方が先を行くようになる。 どうしてって、男と女というのは、いつもいつも一緒にいると、一緒にいたくなくなるようにできているからだ。 そして最初に嫌になるのは、いつも決まってお母さんの方なんだね。 今だって熟年離婚なんて聞くだろう?成田離婚なんてものもあるね。どちらも女の人が男の人と一緒にいるのが嫌になっちゃったケースだよ。 だからお母さんは、お父さんから逃れようとして速足で歩くようになる。 でもお父さんもお母さんを逃したくないものだから、これまた速足で歩くようになる。 お母さんの後を追いかけている子どもも、しょうがないから速足で歩くようになる。 こうして人類全体が速足で歩くようになった。 すると、お母さんはお父さんに追いつかれまいと、余計に速足になる。 お父さんはお母さんに追いつこうと、これまた余計に速足になる。 その後を追いかける子どもも、しょうがないけどやっぱり余計に速足になる。 するとお母さんは更に速足になり、お父さんと子どもも同様だ。 こうして人類全体の歩くスピードがどんどん速くなっていった。 さっきバグダードは世界の中心にあると言ったよね。 当時の世界というのは、まだそんなに大きくなかった。 人類に発見された土地はバグダードとその周辺に限られていた。 バグダードから離れるに従って、未開の土地が広がっていたんだ。 でもお母さんの歩くスピードがどんどん速くなっていったものだから、徒歩で半年分の距離というのがどんどん長くなっていった。 そうして人類に開拓された土地というのもどんどん広がっていったんだ。 お母さんはまさに開拓の母でもあるんだね。 で、そんなあるときだ。お母さんたちは半年経ってもUターンせず、まっすぐ歩き続けた。 子どもを産まなくなったからじゃないよ。 実はちょうどその頃、人間の生活範囲が今と変わらないぐらいになった。 今世界地図に載っているような土地を全て発見し尽くしたんだ。 つまり人間の歩くスピードが、半年で地球半周分になったということだ。 当時のお母さんの歩くスピードは?という問題が出たら、0.5地球/半年と答えなくてはいけない。 どうしてそれがわかったかというと、同じ日にバグダードを出て、反対方向に歩いていった別のお母さんと、半年後に出会ったからなんだ。
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