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さて、これでファミリーレストランのうちのファミリーができた。じゃあ次はレストランだけど、レストランはファミリーができたことによってできたんだ。
ファミリーなくしてレストランなしだよ。
ところで今の話の中で、一つ置いてけぼりになっていたものがあった。
そう、ドーダグバ島だね。
ドーダグバ島は非常にガッカリしていた。
そこは何もない不毛の島だったんだ。でもこれからはお母さんたちがやってきて、しばらく滞在するという。
これはチャンスだ。一大リゾート島として名を上げよう。ドーダグバ島はそう考えた。
何しろ何もない小さな島だ。
それまでアメリカ大陸とかオーストラリア大陸とかに馬鹿にされていたんだ。
大陸ならまだしも、ニュージーランドやハワイからも酷い扱いを受けていた。
よーし、あいつらを見返してやるぞ。これからは世界中のお母さんが集まるお母さんの楽園になるのだ。
ドーダグバ島は全身全霊を込めて、土と岩ばかりだったところに草を生やした。
これでお母さんと一緒に牛がきても大丈夫。
牛たちにドーダグバ島の草を食べてもらって、たくさん糞をしてもらおう。
そうすれば土地が肥えて、椰子の木が生える。椰子の木が生えれば、さらにお母さんたちが長期滞在してくれるぞ。もしかしたらそのまま定住してくれるかも。するとドーダグバ島はバグダードを超える世界一の大都会になるかも。
そう思って期待に胸を躍らせて待っていた。
ところがどっこい、お母さんたちは一人も来ないというじゃないか。
ドーダグバ島はもう島を続けるのが嫌になってしまった。
こんな太平洋のど真ん中で一人寂しく荒波に身を削られるのが馬鹿馬鹿しくなった。
そうだ、こんな田舎にいるのはもうやめよう。都会に出よう。バグダードに行こう。
そこでドーダグバ島は生まれ故郷を捨ててバグダードへと行った。
生まれて初めて見る都会は刺激に満ちていた。
波とウミガメぐらいしか知らない田舎者には、正直言って少々刺激が強すぎた。
ドーダグバ島は目を回して倒れてしまったんだ。
島が倒れてしまったらどうなるのだろう?
人が倒れていたら、すぐにあっ、人が倒れてるってわかるよね。
木も同様だ。牛だってそうだ。
でもドーダグバ島にあるのは土と岩と、牛用の草だけだ。それが太平洋にあるからドーダグバ島だとわかるのであって、バグダードにあっては区別がつかない。
そうして誰に気づかれることもなく、バグダードの大地の一部と化したのだ。
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