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俺は、羽井を守りたい!
翌朝、学校に彼女が来ないのを確認すると、俺は自転車で彼女の家に向かった。
立ち漕ぎでマンションに続く上り坂を登ると、セミが街路樹から一斉に甲高く鳴きちらす。
午前中なのに、アスファルトはもうじりじりと熱くなっていた。
坂を登るごとに思いが駆け巡る。
彼女は優しかったのだ。
本気で計画していたくせに、俺を本番に巻きこもうとはしないほど。
また一つ考えが浮かぶ。
彼女は俺に賭けてたんじゃないだろうか。
好きだと告白した俺が、彼女を見捨てない男かどうか。
計画を阻止して、嫌われても構わない。
振られても彼女を守れるのなら、俺は迷わず振られる未来を選ぶ。
マンションにたどり着き、俺は駆け込むようにエレベーターに乗り込んだ。部屋番号は、苗字をポストで探して確認済みだ。
真夏の風通しのためだろう、目的の部屋のドアは開いていた。
低く絞った男の声が聞こえた。
ぞわり、と血がたぎるのを感じる。羽井の、父親だ。
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