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頼れる友達
春の空は花曇りに白んでいて、道なりに続く五分咲きの桜の色と似ていた。
卒業式後の喧噪を抜け、俺と彼女はこっそり自転車で例の公園へと向かう。
真夏の日。
彼女の父親に殴られた俺は石頭のおかげで、奇跡的にたった数日入院するだけで済んだ。
女子生徒の父親が同級生の男子生徒を殴った、この事件は小さな騒動になったらしい。「らしい」というのは、気絶している間に話が纏まったため、俺は後日、様々な人たちからの事実確認と、母からの鉄拳を受けただけで済んだからだ。
真紀が顔の広い親のツテを使って、俺と彼女が不利にならないよう取り計らってくれた事も、事態の早期収束にかなり効いたようだった。
彼がくたびれていたのは、彼女の事情をこっそり探っていた為だと、見舞に来た本人から聞かされた。
さすがに、計画については気づいていないようだったが。
「彼女ができた途端にお前が悩みだしたらよ、そりゃ友達として気になるっつーの」
影で詮索していたのを気まずく思ったのか、真紀は唇を尖らせながら告白してくれた。
「でも、まあ、羽井もお前もよかったな」
歯を見せて笑う真紀は、惚れそうなほどかっこよかった。
俺はいい友人を持ったと思う。
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