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【5】One Step
夕食の後。
俺からキスをした。
なんというか、「ごちそうさま」って伝えようと、思って。
いつもみたいに、お風呂行ってきてって田村に言われ。
椅子から立ち上がったら、目が合った。
で、その瞬間、そう、してた。したいと、思った。
田村の頬に手をあてて、唇を、重ねた。
したらなんか、舌が入ってくる。
あったかくて、何か、意思を持った生物が口の中、動き回る。
それはすっごく優しくて。
なんか、甘くて。
「ん……」
あー、声、出ちゃったなー、なんて。思うけど。
ま、いっか。
田村が俺の口ん中くちゅくちゅゆわせながら、そのまま俺を引き寄せて自分の膝に乗せる。
俺は田村を跨ぐみたいにして、あまり体重かけない方がいいかなーなんて気にしてたけど。
最終的に、なんか、力が抜けた。
唇がそっと離れて、ふう、と大きく息を吐いたら。
田村が頭を抱き寄せるから。
こてん、なんてその肩に頭を乗せる。
「志麻さん……すっげー、好き」
ぎゅ、なんて抱きしめながら、田村が言う。
「ん。俺も、田村のこと、好きだよ」
本心だから、そう答える。
うん、ほんとに、好きだよ。
てか、好きだから、かな。キスがこんなに気持ちいいのって。
「また、ヌかなきゃいけない?」
ちょっと、ふざけて訊いてみた。
「…………。一歩、進んでいい?」
「え?」
顔を上げて、田村の目を、見る。
「俺のに触ってってのは、絶対無理だと思うんだけど。でも、逆に、志麻さんの、触っていい?」
……………。
えっと……それはつまり、アレ、に触りたいって、こと?
「無理、しなくていいけど。ま、無理させるつもりもないけどさ」
田村が少し照れながら、言う。
なんとなく、下腹部に当たる田村のモノが硬い。
「えっと……」
モノに、触るって……そりゃ、勿論排泄の為にいつも触ってるけど、そうじゃない時に触るってのは、とどのつまり、自己処理の時に、ってことで。自己処理ってのは当然、気持ちよくなる為ってことで。
「さ……わり、たい、のか?」
わからん。人のモノに、触りたいって……あ、そっか。まあ、確かに、セックスしてたら女の子は、触りたがる、か。
「うん、触りたい。てか……俺、志麻さんなら、もー、どっこも触りたい」
えらく可愛い言い方してるけど、言ってる内容はまあ、どえらくエロいわけで。
俺もなんだか、恥ずかしくなってしまう。
で、ちょっと想像。する。
触る感覚じゃなくて、触られる感覚ってのを。
もう、ほんとに長いことそんなことされてないから、イマイチ思い出せないんだけど。
でも。うん。
「……わかんねーけど、イヤじゃ、ないかも? いや、なんか、その……えっらい恥ずかしいっちゃー恥ずかしいけど」
「恥ずかしいの、イヤ?」
おいおい、それ、訊く?
田村の目が、なんかエロいし、ニヤニヤしてるし!
「お……まえそれは……」
赤くなってる自分が、わかる。
ずるい。
それ、訊くのはなんか、ずるい。
「志麻さん、触っていいなら、触ってって、ゆって?」
えー……えええええええ!
俺は、もおとにかく顔が熱くて熱くて。顔から火が出る、なんて比喩表現が、マジでリアルで。
そんで。
その熱いってのが、なんとなく自分の下半身にも伝わってるのがわかる……はっきり言っちゃうと、半勃ち、してる、気がする。
「そ……んなの……いえねー……し」
小っちゃく反論して。
赤くなってる自分の顔、隠すように。
田村の肩に顔を埋めた。
「うっわ。マジ……可愛すぎでしょ、志麻さん」
田村はそんなことを言いながら、せっかく隠している俺の顔を掌で包んで真正面に向かせた。
「い……言って、欲しい、のかよ?」
あーもう、あーもう! 恥ずかしいけどなんか、田村がめっちゃ喜んでるの、わかるし!
ニヤニヤ、ニヤニヤしながら俺のこと、じっと見てて。
なんか、お腹の辺とか、ムズムズするし。
とりあえず、目は瞑っちゃうけど。
「……さ……さわっ……さわって……」
うわーもう! 何言ってんだ、俺! なんちゅーこと、ゆってんだ、俺!
でも、言った瞬間にはもう、スウェットの上から田村の手は俺の半勃ちしてるソレ、触ってて。
「た……たむ……たむらっ……」
なんかいろいろ、ヤバくなって、田村の服をぎゅっと握ってしまう。
「ん? 何? 触ってって、ゆったの志麻さんだよ? あ、直に、触って欲しい?」
待てーい!
そんな、直にって! だって、だってアレだぞ? 普通ならそんな汚ねーモン、触らんだろ!
「む……無理! そんな、きったないモン、触んなくていい!」
「何言ってんのさ? 志麻さんのモノ、何も汚くなんかないよ?」
田村の手は、もうスウェットの中まで入ってて。
「ほら、なんか勃ってきてるし」
握り込まれる。その瞬間、びくん、って反応する。
うわ、うわ、うわ! ヤバいって、マジで。
も、当分セックスなんてしてないから、とにかく自分以外の手の感触なんて、ほんとに久々過ぎて。
「どこ、気持ちイイ? 一人で、どうやって、シてんの?」
田村がまた、とんでもなくエロいことを、とんでもなくエロいトーンで訊いてくるから。
もう、どうしようもなく、そいつが熱くなってるのがわかって。
恥ずかしいのと、気持ちイイのと、わけわかんないのと。
全部が混じって田村にしがみついた。
すると、そのままお姫様抱っこ、なんてされてしまう。
「わ! ちょ、待って。さすがに、重いだろって!」
「重いよ。だから落とすの怖いから暴れないで」
確かにそれは怖いから、大人しく田村にしがみ付く。
と、そのままソファにそっと下ろされた。そのままズボンをパンツごと脱がされ、寝かされて、上から抱きしめられた。何も、抵抗なんてできないまま。
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