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「イヤなら、もうしない、けど?」
うわー、田村が意地悪だ。
だって、俺が気持ちよくなってんの、絶対わかってる。
そのくせ、ニヤニヤ笑いながら、絶対“イヤ”って言わせないように目で語ってるし。
「……ヤ……じゃ、ない」
もう恥ずかし過ぎるから、目を閉じて、顔を隠しながら、小さく呟く。
そしたら。
田村がぎゅっと抱きしめてくれた。
「良かった」
なんか、全部全部、田村の手の中、みたいな感じが。
嫌だけど……イヤじゃない。
「俺ね、志麻さん。全然いいんだ」
何が? って俺が微かに動いたことで、田村がふっと笑いながら、続ける。
「志麻さんがきもちくなって、俺の手でいっぱいイってくれて、そーゆーの、見れるだけでちょー幸せ」
俺なんて、田村のモノを見ることさえ、してないのに?
黙ってる俺の、そんな心情に気付いたのか。
「いんだってば。俺は、後で自分でどーとでもするし。何なら、今志麻さんがイった顔、想像するだけでイけるし」
「なんでそーゆー俺が恥ずかしくなることばっか、言うわけさ?」
「だって、恥ずかしがってる志麻さん、超絶可愛いもん」
「……俺、可愛い、か?」
そんなこと、思ったことも言われたこともない。あ、まあ鹿倉はふざけてゆってたけど。
「可愛い。も、すんげー可愛い」
どっちかっつーと、怖いって言われる方が多いんだけど。
「また、やらせてよ」
「…………それは、その……」
「うん、シてってゆったらいつでもシたげる」
言わないとシないってことで。
もうほんとに、恥ずかしいという感覚がどっかイカれてしまうくらい、恥ずかしいから。
「無理。絶対言わない」
「えー? 言いたくなると、思うよ?」
「何でだよ!」
「だって、志麻さんそろそろ、キスでスイッチ入る感じになってきたから」
「え?」
「自覚、ない?」
ない、と、思う。けど。
実際。
田村のキスは、気持ちよくて。
キスした瞬間、スンってどっか、切り替わる感じが、ある。言われてみれば。
「だから。志麻さん、キスはOKでしょ? そしたら俺、いつでも志麻さんのスイッチ入れられるからね」
「……スイッチ、入ったら……俺が自分で、言わないとダメ……ってこと?」
え、ちょっと待って。
今俺、なんつった?
自分で言った、あまりにも恥ずかし過ぎる言葉に、固まってしまう。
「どーしよっか? シて欲しい? 欲しくない?」
おいこら! 調子乗ってんじゃねえ。
って。心ん中でめっちゃ、田村のことどついてんのに。
なんでか、俺は。
俺の口からは。
「シて欲しい」なんて、とんでもない答えが、つるっと飛び出してて。
「うん、いいよ。いつだって、シたげる。そのうち、もっときもちくさしたげるし」
え?
今、何つった?
目で問う。
「次、またもう一歩前進、できるかなーってタイミング見てからね」
わからん。
そんな、曖昧なこと言われても、俺には全然わからん!
「どーゆーこと?」
「教えてあげない。まだ。ね」
「……田村?」
珍しく、田村が鹿倉みたいなふざけたくふくふ笑いしてるから。
俺は眉を寄せて首を傾げるしかできなくて。
「俺だって、志麻さんに教えてあげられること、あるってこと」
なんか、田村が一人で盛り上がって俺のことひたすら抱きしめてんだけど。
だんだん冷静になってきて、わかんだけどさ。
このカッコ、どーよ? なんで俺だけ、下半身剥がされてんのさ?
「あの……さ。田村さん。盛り上がってるトコ、申し訳ないんだけど、俺、下、履きたい」
「いんじゃない? 俺、このまま志麻さん裸に剥いて眺めてたいけど」
「…………調子乗ってんじゃねーよ」
ちょっとずつ、自分を取り戻せたから。とりあえず、軽く睨んでやる。
「はいはい。じゃ、もうそのままでいいからお風呂、行ってきたら?」
「………ん」
このままだと本気で田村にマッパにされそうだったから、俺は素直に頷くとスウェットのズボンを持ってバスルームに逃げた。
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