【6】Naked

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【6】Naked

 最近、堀さんとしょっちゅう飲んでる。  勿論、ただ酒飲んで楽しんでるだけってわけじゃなくて、仕事についておもっきり動き回ってる上での、飲みだけどさ。  堀さんの個人的な繋がりがある人間、いっぱい紹介された。  今後、どういったビジョンでやっていくかも、いっぱい話した。  今の会社で、今やってる仕事を今後どう割り振るかとか、そういった細かいことなんて、イヤんなるくらい話し合った。  スケジュールも、ケツを決めたから当然それに併せて細かい打合せは呑気にやってられるわけじゃないことも、全部わかってる。  なのに。  三人にだけ――というか会社の仲間たちもだけど――どうやって伝えていいか、わかんなくて。  ここんトコ、いつだって二人で話すのはそれについて。  言わなきゃいけないのはわかってるし、言おうと思っているのに、そのことだけ、いろんなこと考え過ぎていつだって二人で酒ばっか進んでしまう。 「やっぱさ、核になるのは律なんだよ」  堀さんが、言う。 「当然、経験値が違うし。あいつが裏でがっつり動いてるから、うちのチームが上手く機能してる」  そう、それは俺も同意見。 「で、絶対的なエースになってくれるのは、俺は田村だと踏んでる」  これが、驚きで。  俺としては、堀さんは鹿倉をそういうポジに置こうとしてると思っていたから。  ずっと自分の傍に付けて育てて、こうなることがわかっていたかのように。いや、まあ堀さんはわかっていたんだけどさ。とにかく、堀さんが鹿倉を引っ張ってるのが、俺にも伝わっていたから。 「かぐちゃんはね、凄いんだよ。だからも、俺じゃねえって思ったん」 「どういうこと?」 「あいつは、律にも田村にも、絶対に必要なカギみたいなヤツ。俺にとっての志麻ちゃんみたいなモンかな」  堀さんの表現はいつだって独特で。  ただそれ、本能の赴くままに喋ってることが多いから。  その堀さんの本能こそが、この人が天才なんだろうって思えるから。  何とかして、俺は汲み取んなきゃいけないわけで。 「知ってた? かぐちゃんがサポートに入った案件って、大抵どこでも爆発してんの。しかも、あいつは多分、何もわかっちゃいねーのよ、それ。自分が起こしてるってこと」  いい意味でね、当然。やっぱ、独特だわ、ほんと。 「あいつには、みんなついてくるよ、きっと。人、惹き付ける何か、魔法みたいなモン持ってんだろ」 「あー……律だっけ? かぐちゃんは悪魔だとか、ゆってたな、確か」 「そうそう。それに、多分田村も取り込まれてんじゃね?」  ものすっごい、嬉しそうに堀さんが言う。  言ってる堀さんこそ、かぐちゃんの魔法に完全に取り込まれちゃってるし。 「だからね。俺、田村とかぐちゃんに一個デカい案件やらせたんだよね。試してみたくて」 「多津屋だろ。あれ、もう噂になってる」 「想定外だよ、俺にしてみりゃ」 「んなことないっしょ。堀さんの読みが当たってんじゃん」 「ちげーわ。読んでた上、いかれてんだっつの」  田村と鹿倉が二人で楽しそうにやってる仕事。  憧れの堀さんから貰った、つって。  結局、全国展開に向かって今、走り出してるから。 「どっちの手柄とかじゃねーし、田村にはかぐちゃんが必要で、かぐちゃんにも田村が必要で。そーゆーの、見てたらさ、もーおいら、いらんなーって」 「いやいや。兄さんいなきゃ、何も始まらなかったことだから」 「じゃあ、って律、見てたら。かぐちゃんと一緒にあちこち、火、つけて回ってる」 「どーゆー表現よ? あぶねーなー」  放火魔かよ、と俺がくふくふ笑っていうと、堀さんが。 「でも、そんなじゃね?」  嬉しそうに笑ってた。 「あれ、律がかぐちゃん振り回してるって最初思ってたけど、逆だなって、おいらは最近思ってる」  そっか。それ見たくて、最近律に鹿倉をくっつけさせてんのか。  元々律の幅広い視野を鹿倉に勉強させてると思ってたけど、堀さんが一時自分の案件に鹿倉をあちこち噛ませて顔広げて。そしたら、鹿倉がそれに律を巻き込むよう、動いてる、って感じかな。 「三人で、やってけると思うよ、多分」 「当たり前じゃん、そんなの」  堀さんが食い気味に言った。 「でも、だけじゃ、勿体ないんだよ」 「……俺らの後、誰、入れたいんだよ?」 「入れたくねー」  矛盾したことを言って、頭を掻くから、俺は笑うしかできない。 「いつかは、ほんと。また五人でやりたいんだ、おいらは」 「ん」  手元のグラスを、飲み干して。  結局そこに辿り着く。  何回話しても、いつ話してても。  堀さんが、今のチームが大好きでたまんないって、知ってるから。  そんで、それは当然俺も、だし。  堀さんがいて、その右に俺がいて。で、その前で三人がおもっくそ楽しんで走り回ってる。  そーゆー現状。ずっと、ずっと続くと俺は思ってたけど。  でも堀さんは、前の三人をもっと走らせたくて。  じゃあ、後ろについてる俺ら、ジャマじゃね? って。  きっとそう、思ったんだろーなー。  結局、また。  いつどうやって三人に話すのかだけ決まらないまま、俺たちは店を後にした。
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