2012

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2012

「東京スカイツリー、オープンしました!」  テレビから、東京の新名所を紹介するリポーターの声がした。思わず顔を上げると、画面には青灰色の電波塔が映っている。  あれ? 俺なんで、ドキドキしとるんやろ。  東京なんて、飛行機でしか行けないところだ。新しい観光地ができたって、俺の生活にはなんの影響もないのに。  ほなけんど、調べたよな。東京への行き方も、チケット代も。  展望台が2種類あって、セットで前売り券を買う方が安くて、でもそんなのより、往復の交通費と宿泊費がべらぼうに高くて白目をむいた。  そんな記憶に、頭が混乱する。  なんで、あんな真剣に調べたんやっけ……?  そのとき、記憶の泉の底から小さな泡が浮き上がってきて、水面でぱちんと弾けた。 「うん! 約束じょ!」  泣き笑いの顔で小指を差し出した女の子。その姿を思い出して、全身に鳥肌が立った。 「米花(まいか)……」  ドキン ドキン  心臓が跳ねる。暑くもないのに、体中から汗が吹き出した。  なんで……?  なんで俺、米花のこと忘れとった?!  今日あいつ、学校来てた? 席はどこやっけ?   時間割や給食のメニューはちゃんと覚えてるのに、なぜか米花に関する記憶だけが曖昧だ。  俺は慌てて立ち上がり、自分の部屋に駆け込むと、机の引き出しを開けた。
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