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運良く、友達が助けてくれたのと住み込みでの仕事が見つかってなんとかやってきた。
あんな生活、綾菜にはさせたくないけど、離婚しかないのかな?
健二くん、そんなに甲斐性あったっけ?
養育費、取れるのかなぁ?
あーでもない、こーでもないと、野菜売り場での仕事をしながら考える。
綾菜の場合、離婚したとしたらうちに戻ればいいから住むところには困らないか。
でも、暮らしていくとなると金銭的にもう少し余裕が欲しい。
「仕方ない!翔太が手を離れるまで、ばぁばが頑張って働くとしますか!」
「えっ!何?」
思わず口にしたセリフが、松下チーフに聞こえてしまったようだ。
「あ、いえ、なんでもないです」
「そう?ならいいけど」
こっちを向いてにこっと笑ったように見えた松下チーフ。
顔つきが変わったような気がするのは、私だけかな?
穏やかになったというか。
マスク越しだから、違うかな。
「あの、チーフ、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」
「え?なに?」
「プライベートなことなんで、仕事が終わってからでも…」
「いいわよ、小平さん、5時まででしょ?私も今日は5時までだから、帰りにお茶でもしようか?」
ということで、仕事の帰りに松下チーフとお茶することになった。
離婚したということについて、聞いてみることにした。
「じゃ、先に行ってるね」
着替えてタイムカードを打刻すると、松下チーフは帰っていった。
「私も追いかけるので」
急いで着替えて、車で喫茶店まで向かった。
「こっち、こっち!」
「お待たせしました、ごめんなさい、お疲れのところ」
「いいのよ、たまにはこんなのもいいね、仕事帰りにお茶なんて」
こんなふうに職場以外で話すなんて、初めてだなといまさら思った。
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