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「借金で離婚したってことは、チー…じゃなかった洋子さんにも借金取りが来たってこと?」
「督促状がきてわかったんだけどね、問い詰めたら500万くらいあって。利息がどんどん増えていってた。こりゃダメだと思ったから離婚。その方が万が一の自己破産もしやすいだろうし、亭主も実家に帰りやすいじゃない?」
「まぁ、そうだね」
「家は賃貸だったから私1人で住むのに小さな部屋に引っ越したし、今の給料があれば自分1人ならなんとかなるよ。それになんといっても気楽!」
「旦那さんは?」
「あ、実家に帰って親と暮らしてるみたい。借金はどうしたのか知らないけど、もう私には関係ないしね」
第二の人生ってとこだろうな。
うらやましい気がする。
「子どもは?息子さん、いたよね?」
「うん、息子がさ、一緒に暮らそうとか言ってくれるけど、それもめんどくさくてね。動けなくなるまでは1人で生きてくって言っちゃった」
「そっか。なんか今は楽しそうだよね?」
「自分のことだけ考えればいいからかな?」
「あのさ、もう一つ、聞いてもいい?」
「いいよ。なに?」
「旦那さんとは、その、セックスしてた?」
ぶっ!とコーヒーを吹き出した洋子。
「それ?聞きたいことって」
「うん、変なことでごめん」
「いや、いいけどさ。うーん、たまにしてたよ月に2回?あ、そうそう!明日は離婚して引っ越すって前の晩、したわ」
「え?」
「これで最後かぁ、とか思いながら妙にしんみりしたけど。でも、考えてみたら離婚してもセックスはしていいよね?どっちも1人なら」
「ま、まぁ、かまわないと思うよ」
「もしも、あんまりにも寂しくなったら、誘ってみるかな?フフッ」
外でしてこいとか言われてしまった、なんて洋子には言えなかった。
お金の方が許せない、か。
チーフ《ようこ》と別れての帰り道、運転しながら考えていた。
『浮気だったら、こっちも浮気してやって仕返しができるけどお金、それもこっちのためにやったという借金だとさ、仕返しできないよね?それが許せない!』
なんて言ってた。
仕返しねぇ。
綾菜の話だけでは、よくわからないから健二くんの話も聞いてみようかな。
玄関ドアを開けたらカレーの匂いがした。
「ただいま!いい匂い!」
「ばぁば、おかえりぃ」
翔太が走ってきた。
抱きかかえながらリビングに行く。
「あ、お義母さん、お邪魔してます」
立ち上がって出迎えたのは、綾菜の夫で翔太の父親の健二だった。
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