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封書
「おはよう。昨日は何か用事だった?出かけちゃってごめんね。それから税務署からなんか手紙が来てるけど?」
朝から旦那にLINEする。
ぴこん🎶
『わかった』
はっ?
それだけ?
私とはLINEのやり取りも嫌なの?
もともとそんなに話す人でもなかったけど、こんなにぶっきらぼうだったっけ?
もう!
何も指示がないなら私は知らないからね、ということで封書をレターラックに放り込んだ。
さてと、仕事に行かなくちゃ。
着替えてコーヒーを飲んで少しだけメイクして、忘れ物なし、と。
「おはようございます」
いつも早い貴君を見習って、私も早く出勤するクセがついた。
「あ、おはよう」
「昨日はありがとう。楽しかった!でも、ずっと運転してもらって疲れなかった?」
「あれくらい平気だよ、運転は好きだから全然苦にならないし。なんならもっと遠くでも平気だから」
「そうなの?じゃあさ、もっと楽しいこと見つけたらまた一緒に出かけてくれる?」
「よろこんで!」
「やった!」
また次があると思うだけで、気持ちが上がる。
「おはようございます♪お二人とも早いですね」
受付の桜井芹奈さんがやってきた。
「なんか、私もつられて早くなっちゃって。年寄りになったのかしら?」
「そんな、年寄りだなんて!小平さんは、うちのお母さんより若いですよ」
「お母さんて、いくつ?」
「45です、小平さんと同じだけど、見た目が全然!あ、そんなことより…」
なんだか褒めてもらった気がしないけど、この子なりの褒め言葉なんだろうな。
「本日は、車検の予約が2件入ってますので、よろしくお願いしますね」
「「了解!」」
「じゃ、9時になったらおみえになると思うので…」
ぺこりと頭を下げて、店舗へ戻っていった。
「なんか、今のって…」
「ん?」
「未希さんのこと、若いって言いたかったんだろうけど中途半端で、もやっとしたね」
肩をすくめながら貴君が言う。
「やっぱり?私もなんか、どう返事していいのか悩んだわ。ま、でも、年齢なんてどうでもいいんだけどね。こうやって新しい仕事にもつけたし」
「そうだね、俺もあんまり未希さんとは、年齢差を感じないから、関係ないね」
なんですと!
こっちの方がずっとうれしいセリフだ。
思わずニヤけてしまった。
「おはようございます」
車検予約の1台目、赤い軽自動車のお客さんがやってきた。
「お願いしま…あれ?まさか!小平さん?」
「あー、久しぶり!」
「ここで働いてたの?」
久しぶりに聞いたその声の主はチーフ《ようこ》だった。
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