不満と焦り

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「うん、ごめん、私も手伝う。だから、ね?」 「なに?」 「終わったらちゃんと手伝うから、しよ!」 言い終わると同時に旦那をベッドに押し倒した。 不意をつかれた旦那は、思ったより簡単に私の下敷きになる。 「ちょっ、まっ、待てって」 「あ、そか、電気消さないとね、さすがに」 立ち上がり照明のリモコンを探した。 「あれ?どこ?」 「いや、そうじゃない、違う」 「え?じゃあ、なに?ゴムがないとか?」 「…や…くれ」 声が小さくて聞こえなかった。 「ん?聞こえないけど」 すーーっと一度深呼吸する旦那。 「そんなにセックスしたいなら、外でやってくれ!」 「は?!」 一瞬、何を言われたかわからなかった。 「外でって言った?いま、ね!」 「あぁ、言ったよ。外で勝手にやってくれ、俺はもうしたくない」 そう言うと、私をベッドから引きずりおろして襖からリビングへ押し出した。 あまりに突然のことで、理解できない私はされるがままにリビングで座り込む。 ばん!と襖が閉められた。 「拒否された?」 思わずつぶやく。 拒否どころか、外でして来いと言われた? 「ちょっと、どういうこと?私が外で誰かとセックスしてもいいってこと?」 「…」 返事はない。 「浮気してもいいの?それとも、あんたが浮気してるからそんなこと言うの?」 襖をバンバン叩きながら問い詰めた。 いきなりガラッと襖が開いた。 「浮気なんかしてない、でももう俺はしたくない。だから、そんなにお前がしたいのなら、誰かと勝手にしてくればいい!言いたいことはそれだけだ」 「うそ…」 「嘘じゃない、浮気なんかしてない」 「違うわ!その嘘じゃない、私が話しかけてもあんな適当な返事しかしないのに、なんでこんなことだけはそんなにハッキリ言うのかってことよ」 はぁとため息をつきながら、首をふる旦那。 「合わないんだよ、俺とお前は。いろいろと合わない、そういうことに関しては特に。とにかく、準備もあるからほっといてくれ」 ピシャリと襖が閉められた。 あ、そうなんだ。 へぇ、合わないんだ私たち。 そんな気はしてたけど。 だから私ずっとイライラしてたのかな。 でもそれは、裸で抱き合えば解決することかと思ってたのに。 それを拒否されたとなると、私はどうしたらいいんだろ。 誰かと?するぞ! 「ホントに外でしちゃうからね!後悔しても知らないからね!」 ソファにあったクッションを襖に思い切り投げつけて、2階へ上がった。 生活パターンが違う私と旦那は、家を建てた時から別々の部屋を持っていた。 「はぁー、むしゃくしゃする!こうなったら、とんでもなくいい男見つけてやるんだから!」 ヘッドフォンをつけて、ロック曲をガンガンにならした。 よくわからない歌詞を適当に大声で歌って、めちゃくちゃに踊って、そして知らないあいだに泣いていた。
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