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「ああ、全然変わってないな」
眉を顰めたり、苦笑いされたりしたわけじゃない。
そうじゃないけど――
全然褒めてないってことは、ひしひしと伝わってきた。
「あ、そろそろ時間。お引き留めしてすみませんでした。お会い出来て嬉しかったです。失礼します」
彼等と別れて電車に乗り込んだら、どっと疲れた。溜息をついて顔を上げると、電車の窓に映った自分の顔が見えた。
本当に疲れて見えた。
ここ数年、ずっと同じに見えていた顔が、確実に疲れて見えた。
そして思った。
あー私、変わってないようで年取ったんだなって。
あの頃は若かったな。
あいつと付き合っていた頃。
大学に入ったばかりだった。
彼とはサークルが一緒で、たまたま2人きりになった時に食事に誘われて、それから何度か2人で会った。
イケメンって程でもないけど悪くない顔だと思っていた。
やさしくて、気が利くとも感じていた。
だからある日一緒に映画を観て泣いてしまって慰められた時に思わず尋ねた。
「ねえ、私達って……友達?」
すると彼はにっこり笑って答えた。
「それ以上になりたいの?」
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