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「そうですね。手間が省けました」
「あんなのでも20代が相手にしてくれるとはびっくりだけど」
「ですよね……まあでも肩書きだけなら、優良物件に見えるのかもしれませんね」
ウチは一応名の知れた会社だし、お世辞にもイケメンとは言えないけど身長は高い。
「ところで車で送って来てくれたの誰? 頭しか見えなかったけど、男性よね?」
うわっ、見てたのか。
「ああ……近所の同級生です。彼、既婚者です」
「なーんだ、でも男友達はいたのね。なら彼に男紹介して貰えばいいじゃない」
「いや……あんまり友達いるタイプじゃないし……」
「そうやって最初から否定しないで、とりあえず頼んでみたらいいのよ」
いや、ないわ。そんなこと気楽に頼めるタイプじゃない。
でも後藤の友達だったら、いいやつなのに独身かも。
後藤だって便宜上結婚しただけらしいし。
でもあの話、本当かな。そんなこと恥ずかしくて言えないだけで、本当はこのまま日菜ちゃんと夫婦でいたいって思ってるんじゃないのかな。
日菜ちゃんと3年も一緒に暮らしてて好きにならないなんて無理だろうし、本当は別れるのが怖いんじゃないかな。その日が急に来て狼狽えないように自分で期限を決めて、いずれ別れる相手だって自分に言い聞かせ続けて、でもその期限が迫ってきて、本当は震えるほどに――
「一条さん、まさかその既婚者のこと好きなんじゃ……」
「へ? す、好きって――テテテ!」
「ちょっと落ち着いて、大丈夫?」
「変なこと言わないで下さいよ」
「そう? そんなに驚くって図星じゃ……」
「考えてもみなかったから驚いただけです」
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